50歳以下では特発性浮腫や薬剤性,月経・妊娠に伴うもの,パルボウイルスB19感染症,好酸球性血管性浮腫,そのほか局所感染症などが多い.睡眠時無呼吸症候群は若年者でも起こりうる.第1章 総論第1章 総論12西垂水和隆浮腫といえば,心臓,腎臓,肝臓をチェックして甲状腺と貧血と静脈血栓を見逃さないように!ということで,浮腫セットなる血液・尿・X線検査をオーダーしていないだろうか?疫学データによると,50歳以上の慢性両側下腿浮腫では静脈不全が最も多く,若年者では睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)以外の器質的疾患はまれで,特発性浮腫や薬剤性,月経に伴うものなどが多い.つまりこれら頻度の高い疾患は,見事に浮腫セットでカバーしていないのである.外果付近にミミズのような所見があれば静脈不全を示唆するし,子どもや孫の1週間前の発熱を聞き出せればパルボウイルスB19を思いつくかもしれないし,目の周囲の紫斑を見つければアミロイドーシスが一発診断できるはずである.このように詳細な病歴聴取と身体診察により,発症時期の推定,機序,複数疾患の関与の推察などが可能であり,これらは検査ではむしろわからないことも多い.逆に検査でTSHが12 µIU/mLという異常値があったとしても,これが浮腫の原因かどうかの判断は,やはり病歴や身体所見と照らし合わせる必要がある.はっきりいって病歴と身体所見で疾患を推定する以外には,浮腫は何も面白いところはない.以下,鑑別疾患に有用な病歴聴取と身体所見のポイントを述べていく.小児ではネフローゼ症候群や急性糸球体腎炎などの腎疾患やアレルギー疾患が多い.高齢者では複合的な要素で起こることが多く,静脈不全や心不全,腎不全な 1 年齢・性別病歴・身体所見のとり方2
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