2 既往歴・内服歴・社会歴第1章 総論 13どに運動神経麻痺や低アルブミン血症,関節炎などが合併して浮腫の悪化が起こる.高齢者特有なものとしてはRS3PE(remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema)症候群やリウマチ性多発筋痛症(PMR),癌関連として上大静脈(SVC)症候群やTrousseau症候群がある.男女差を考慮するもの心・腎・肝疾患の既往は当然ヒントになるが,それが浮腫を起こしているかどうかは評価が必要である.悪性腫瘍の既往は深部静脈血栓症(DVT)やTrousseau症候群,腫瘍やリンパ節による静脈の圧排による浮腫,局所浸潤による限局性浮腫,転移巣の浮腫(骨や皮膚など),低アルブミン血症やリンパ管浸潤での浮腫,皮膚筋炎やRS3PE症候群などを考える.骨盤内腫瘍,骨盤内手術,放射線治療歴があればリンパ浮腫を考慮する.脳血管障害などの神経疾患に伴う麻痺があれば,患側の浮腫が生じる.糖尿病では腎症,心不全,末梢神経障害,薬剤性,神経因性膀胱などで浮腫を起こす.呼吸器疾患ではCO2貯留による浮腫,黄色爪症候群を考慮する.精神疾患では特発性浮腫,薬剤性,栄養障害性浮腫を考慮する.アルコール多飲者では肝硬変,栄養障害,外傷などを考える.喫煙者では肺癌に伴うSVC症候群,Trousseau症候群,DVTを考える.下肢静脈瘤,過去のDVT歴,過去の血栓症,家族の血栓症罹患歴,最近の外傷,長時間の臥床,整形外科的手術,血管手術やカテーテル歴,バイパス術による静脈の使用はDVTを疑う.薬剤歴は重要(2章18,pp.117-119).カルシウム拮抗薬では50%に浮腫を生じる.経口避妊薬などは副作用としての血栓症からの浮腫を生じる.好酸球性血管性浮腫はほとんど20歳代女性,lipedema(脂肪浮腫)もほぼ女性のみ,慢性静脈不全は男女比が1:2である.骨盤内腫瘍や乳癌の治療などの関係でリンパ浮腫自体女性が多い.
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