2579新現場で役立つラクラク成長曲線
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7ことがわかっています.心理的影響により内分泌系の変調,とりわけ成長ホルモンの分泌低下が起こります.これらの要因に栄養環境の不良が加わり,成長不良の状況を複雑なものにしています.人種差は単に人種のもつ遺伝的な要因のみならず,生活環境や生活習慣などの違いがあわさって成長の差異に影響しています.熱帯気候における低体重の原因は気温それ自体よりも慢性的栄養不足や感染症,寄生虫病などの負荷の影響が大きく,また標高の高い土地では大気圧が低いため低酸素症が起こり,そこに高地特有の低温,乾燥,紫外線,農業生産の限界や遺伝的相違も加わって影響をもたらしています.このデータによって作成された2000年日本人小児の体格基準値曲線を成長曲線2,成長曲線3に示します.これは,食を通じた子どもの健全育成(―いわゆる「食育」の視点から―)のあり方に関する検討会報告書に載せられたものです.一方で,平成24年4月から配布されている母子健康手帳に載っている基準曲線は,2010(平成22)年厚生労働省乳幼児身体発育調査に基づいています.一般調査の対象地区は,2000(平成12)年と同様ですが,集計対象は7,652人でした.病院調査では,平成22年医療施設基本ファイルから抽出し2000(平成12)年は,日本人の成人身長の年次推移(増加)が終了した年次とされ,この基準曲線は,同年における,厚生省乳幼児身体発育調査のデータと,文部科学省学校保健統計調査のデータの2通りから作られています.2000(平成12)年乳幼児身体発育調査は2通りの調査からなっています.一つは一般調査といい,平成7年国勢調査3,000地区内における生後14日以上2歳未満の乳幼児および,3,000地区から抽出された900地区内の2歳以上就学前の幼児です.この中から10,021人の子どもが集計の対象となりました.調査期間は平成12年9月1日から30日までです.もう一つは病院調査といい,平成12年医療施設基本ファイルから抽出した産科病棟を有する136病院で平成12年9月中にいわゆる1か月児健診を受診した4,094人の乳児が対象となりました.2000(平成12)年学校保健統計調査の対象は各都道府県において,確率比例抽出法により抽出されています.①学校種ごとに児童等の数の累計和を求めます.②その累計和を用いて調査実施校を抽出します.③抽出された学校から系統抽出により児童等を抽出します.このようにして調査された学校は9,165校,発育の計測値が得られた子どもの数は695,600人でした. 第1章 成長曲線ってこんなに役立つ ● ● ●3.総合的要因1.2000年日本人小児の体格標準値2.2010(平成22)年調査による基準曲線B 成長曲線とその活用1 基準値のもととなったデータと集計方法本書で成長曲線を比較対照させるための基準値はいろいろあります.ここでは,そのもととなったデータの集め方と,それぞれの基準値がどのような集計のしかたによって作られたかについて説明しましょう.

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