2579新現場で役立つラクラク成長曲線
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27して検査することも多いでしょう.器質性を疑うときは頭部の画像検査を欠かすことはできません.頭部MRIやCTなどです.この他に脳下垂体機能に関連した検査を行って,成長ホルモン分泌にほかの異常が合併していないかを調べることになります.この成長ホルモンが有効であれば身長の正常化が期待できます.しかし治療は短期間で終えられるわけではありません.骨を伸ばすための構造である骨端が閉鎖するまで治療を継続することができます.多くの場合は高校生までには治療を終了します.成長ホルモンの治療中に日常生活は制限されませんので,学校生活で特に配慮していただくことはありません.なお,修学旅行や宿泊研修では成長ホルモン製剤の保管や注射を誰が実施するかなどの問題がありますので,注射をお休みするように主治医から指示されていることが多いでしょう.最近,週1回の注射で,毎日の注射と同等の効果が得られる成長ホルモン製剤が利用できるようになりました.今後は広く使われていくでしょう.また,成長ホルモンは生涯にわたって,からだに作用しているホルモンです.成長ホルモン不足はメタボリックシンドロームを招くことがありますので,小児期の治療を終えたときに成長ホルモンの分泌を再評価し,分泌低下が続いている場合には,成人期になっても成長ホルモンを継続して投与する治療も行われています.なお,成長ホルモン治療は経済的には自己負担金がとても高額になるので,なんらかの医療費助成を利用する方が多いです.小児慢性特定疾病医療費助成制度2)を利用して,所得に応じた自己負担で治療を受けることができます.また,各自治体が行っている医療費の助成制度を利用することになるでしょう.小児慢性特定疾病医療費助成制度で注意しなければならないのは,助成を受けられる低身長の程度が−2.5 SDスコアとされ,身長が男子156.4 cm,女子145.4 cm に達したところで助成は終了となります3).甲状腺は首の前面,喉仏の下の皮下に蝶が羽根を広げたような形で皮下に埋まっています.甲状腺ホルモンはヨウ素を原料として甲状腺で作られ,分泌されます.からだ全体の調子を整える役目があって,多くても少なくてもさまざまな症状が出てきます(表1).甲状腺ホルモンが少ない場合を甲状腺機能低下症とよび,その症状は便秘,低体温(手が冷たい,寒がり),(過食はないのに)体重増加,皮膚乾燥,不活発,浮■腫■■(特にまぶたがはれぼったくなる)や徐脈などの症状がみられます.そして子どもでは身長の伸びが低下していきます.甲状腺機能低下症は先天性と後天性に分けられます.先天性甲状腺機能低下症のほとんどが新生児マススクリーニング検査(生後5日目にほぼ全員の出生児が受検し,数多くの疾患を発症前に発見します)で診断されて治療を開始しますので,幼児期・学童期以降に成長曲線により発見できるのは後成長ホルモン分泌不全性低身長症と診断されれば成長ホルモンを補充(投与)します.成長ホルモンは注射でしか投与できません.また連日注射のほうが数日分をまとめて打つよりも効果が大きいので,多くの場合は自宅で家族あるいは本人が皮下注射します.在宅での治療が進んでいますので,薬剤の溶解や注射,また保管に手間がかからないように注射器などが工夫されています. 第2章 からだの病気と成長曲線 ● ● ●4.治療とその後はどうなるか2 甲状腺機能低下症1.どのような病気か

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