2580小児代謝疾患マニュアル 改訂第3版
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33代謝異常関連の特殊検査 代謝異常症の酵素学的,代謝学的,および臨床的な表現型は,広範な内因的および環境的因子によって影響を受ける.異常所見が遺伝的な代謝性疾患を指示するものか,あるいは生理的な変動の範囲かの区別を可能にする至適レベルは,疾患特異的に決まるものである.鍵となる代謝物の濃度に影響する外的因子(例.空腹,摂食)の考慮は必須であり,診断的意義のある異常所見を同定するには,特異的な機能検査が必要となることもある.特異的な代謝物の分析を含む代謝学的検査が迅速に実施できる場合もあり,それによって最適な治療に不可欠な情報が速やかに得られることも多い.このような代謝物の検査は,(変異の局在部位によっては)より長時間を要するうえに,決定的な結果を提示できないこともある分子遺伝学的検査を補完するものである.生化学的な変化と酵素学的検査によって,意義不明瞭な遺伝子配列変化との機能的な関連性が確定されることもある.様々な代謝学的検査について,精度管理のための国際ネットワーク(例.ERNDIM/CAP)が確立されているが,一般的には自発参加によるものとなっている(自施設の検査室に確認されたい).中間代謝 図は中間代謝(アミノ酸・糖質・脂質・エネルギー)の主要経路と,必須の代謝物(2ページ参照)を評価するための基本的な臨床検査項目(黄色),重要な特殊代謝物スクリーニング検査項目(オレンジ色)を概観したものである.血液中の遊離脂肪酸濃度の上昇は,異化亢進状態における中性脂肪の動員を指示する所見である.有機酸(尿)とアシルカルニチン(乾燥血液濾紙)は,アミノ酸分解および脂肪酸酸化によって生じるカルボン酸類と,そのカルニチン誘導体を表している. 先天代謝異常症,特に代謝救急性疾患を疑う場合は,前もって検査室に知らせておくこと.代謝異常専門チームの誘導によって,不必要な遅延を防ぐことができる.44  第Ⅰ章 先天代謝異常症の診断と治療

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