2581内分泌外来診療Q&A
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▶引用文献1) Crook MA, et al.: Nutrition 2001; 17: 632-6372) Yan J, et al.: J Bone Miner Res 2012; 9: 1967-1975AQAまず,前項で述べたような消耗性疾患を除外し,さらに低リン血症を生じうる多くの薬剤についてチェックを行います.その後に,慢性の低リン血症を伴う骨軟化症がある場合は,まず,線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23:FGF23)(2019年から保険収載)を測定し,30 pg/mL以上であれば,FGF23関連低リン血症と診断します.先天性にX染色体連鎖性低リン血症性くる病と診断されている場合は別ですが,後天性にFGF23高値となる場合は,FGF23産生腫瘍による低リン血症が考えられます.FGF23産生腫瘍による腫瘍性骨軟化症(tumor-induced osteomalacia:TIO)はきわめてまれな疾患で,大腸がん,前立腺がん,肺がん,その他リン酸塩尿性間葉系腫瘍によっても生じます2).FGF23産生腫瘍は1 cm程度と小さいことが多く,検出に難航しますが,オクトレオスキャンⓇ(111In-pentetreotide)の有効性が報告されています2).FGF23が30 pg/mL未満であれば,臨床的な低栄養(アルコール依存症,神経性やせ症など),飢餓などがないかを確認します.なければ,蛋白尿,アミノ酸尿,アシドーシスの有無を確認し,あれば,Fanconi症候群,薬剤性(イホスファミド,アデホビルピボキシル,テトラサイクリン系抗菌薬,バルプロ酸など),尿細管性アシドーシスの可能性を考えます.なければ,25OHビタミンD(2017年から保険収載)を測定し,20 ng/mL未満であれば,薬剤歴で,ビタミンD代謝を促進する抗けいれん薬(フェニトイン,カルバマゼピン),ビタミンD活性化障害を生じるリファンピシンの服用をチェックします.20 ng/mL以上の場合は,ビタミンD依存症を考えます.経口リン酸製剤(ホスリボンⓇ配合顆粒)を1日20〜40 mg/kg,および活性型ビタミンD製剤の併用療法を行います.経口リン酸製剤は1日3回に分割します.腎不全やリン酸腎症が生じる可能性に留意が必要です.重症例(<1.0 mg/dL)で,経口摂取が困難な場合は病院での治療が望ましく,リン酸Na補正液0.25〜0.5 mmol/kgを6時間以上かけて静注します.リン酸Na補正液静注は,Caと結合して,腎結石や致死性不整脈の原因となりうるので特に注意が必要です.6時間おきに血清Pを測定し,1.5 mg/dLまで上昇したら,いったん中止します.第4章●骨カルシウム代謝性疾患96Point経口リン酸製剤および活性型ビタミンD製剤の併用療法を行う.Column 秀吉の兵糧攻め後のリフィーディング症候群戦国時代,1581年の鳥取城攻略では,羽柴秀吉による100日間にわたる兵糧攻めの落城後,与えられた粥で多くの武士,農民が急死したことが『信長公記』に記され,日本での最初のリフィーディング症候群の記録として,当院の鹿野泰寛先生がAm J Med Sci誌に紹介しています.〔Kano Y, et al.: Am J Med Sci 2023; 366: 397-403〕低リン血症はどのように治療しますか.

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