2585よくわかる高齢者術後回復支援ガイド
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b高齢者における術後管理の課題高齢者の周術期管理において術後管理は,術後合併症の予防と早期回復・在宅復帰へ第3章で述べられる.a) フレイル・サルコペニアの併存第1章 高齢者の術後回復促進のためにの支援が課題となる.1) 術後合併症の予防高齢者の術後は,呼吸器,循環器系の合併症と術後せん妄が問題になる.その詳細は高齢患者では,第4章で詳細が述べられるフレイル・サルコペニアを有している患者が多い.フレイル・サルコペニアを認める場合は術後合併症や在院死が有意に多く,相対危険度が2〜4倍になることが心臓血管外科領域およびがんに対する手術において報告されている6).術前におけるプレハビリテーションにより,ある程度の予防ができるものの,わが国におけるプレハビリテーションの実施率はいまだ低い.フレイル・サルコペニアを有した患者では,当然術後の離床も遅れぎみになる.b) 疼痛評価が困難術後疼痛により離床が遅れたりせん妄が誘発されたりする.そのほかにも,喀痰喀出が困難となり無気肺・肺炎を誘発し,血圧上昇・頻脈が誘因となり心血管合併症を誘発する.このように術後疼痛は,高齢患者の術後合併症の発生リスクを増加させる.しかし,高齢患者における疼痛評価は成人に比べて困難な場合がある.客観的に疼痛レベルを表現できなかったり,痛みを疼痛として表現できなかったりする.さらには,60歳を超える頃から痛みの域値が増加するといわれており7),高齢患者は痛みに鈍感になっているために疼痛対策が遅れがちになる.c) 感染症の発生頻度が高くなる高齢者は主要臓器の機能低下,併存疾患,低栄養状態,離床の遅れなどを伴うことが多いために術後感染症発症の頻度が高くなる.周術期における手術部位感染症(surgical site infection:SSI)の発生リスク因子に関しては,多くの報告がある.米国の感染症に関する最新のデータベースを公表しているInfectious Disease Advisor(https://www.infectiousdiseaseadvisor.com/home/decision-support-in-medicine/hospital-infection-control/surgical-site-infections/)によれば,表28)にあるような10因子がリスク因子としてあげられている.高齢であることは,それだけでSSI発生のリスク因子となっている.その機序としては,図2にあるように加齢に伴う術前の栄養障害およびサルコペニアの存在は,手術侵襲や全身麻酔に伴う免疫能の低下が加わることで術後の創傷治癒および肺炎の発生頻度に強く影響を与えることからと考えられる.2) 早期回復・在宅復帰への支援早期回復および在宅復帰への支援には,身体的・精神的・社会的な課題が存在する.フレイル・サルコペニアを有している高齢患者では,当然,離床の遅れがみられ,術後の回復が遅れる.また,経口摂取に関しても,歯牙欠損,義歯の不具合,嚥下咀嚼障害,消化吸収不良,麻痺などの影響で成人に比べ遅れる.さらには,術後せん妄も術後の合併症のリスクとなり,術後回復を遅らせる.これらの対策については,本章-B-1高齢者の周術期管理と術後回復促進策において詳細を述べる.b) 在宅復帰への課題高齢患者においては,在宅復帰への課題は多い.身体的な回復が遅れたり,回復してa) 早期回復への課題6

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