2597ライソゾーム病改訂第2版
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表2c 基質合成抑制療法(SRT),薬理学的シャペロン療法(PCT) .....................................................びにライソゾーム酵素の生成,細胞内でのリサイクリングのメカニズム,マンノース-6-リン酸受容体(mannose-6-phosphate receptor:M6PR)を介しての酵素の細胞内取り込みの機序などの解明がERTの開発につながった. しかし,ERTの問題点として,酵素投与による酵素に対する抗体産生,特にIgG抗体が中和抗体として作用し,酵素治療の効果を減弱する可能性もあることから,特にポンぺ病(Pompe disease)などでは免疫抑制薬による治療が試みられている. また,多くのライソゾーム病は中枢神経障害を呈することから,近年になって中枢神経系を治療するERTが開発された.特に神経セロイドリポフスチン症(neuronal ceroid lipofuscinosis:NCL)2型でのTTP1酵素(ブリニューラ®)の髄注,MPS II型でも脳室内投与ERTがわが国で承認されている.また,血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)通過型酵素製剤(抗トランスフェリン受容体抗体を結合した酵素製剤)の静脈注射での投与で成果をあげている. 経口治療薬として低分子治療薬,特にSRT,あるいはPCTが開発されている.ゴーシェ病(Gaucher disease)ではエリグルスタット(eliglus-tat,サデルガ®)が開発され,ERTと同等以上の成果をあげている.また,ニーマンピック病C型(Niemann-Pick disease type C:NPC)ではミグルスタット(miglustat,ブレーザベス®)が開発された.PCTとしては,ファブリー病の日本人患者のうち約30%がミガーラスタット(migalastat,ガラフォルド®)で治療されており,効果をあげている. そのほか,最近では筋ジストロフィー(muscular dystrophy),囊胞性線維症(cystic fiborsis)などで治療されているRead through(exon skiping,エク 酵素補充療法(ERT)の歴史098 │D ライソゾーム病の治療1882年1898年1959年1965年1966年1967年1972年1974年1976年ゴーシェ病の症例報告(Gaucherによる)アンダーソン・ファブリー病の症例報告(Anderson,Fabryによる)ライソゾームの発見(de Duveによる)ゴーシェ病での酵素欠損を発見(Bradyによる)ゴーシェ病の酵素治療を提唱(Bradyによる)ファブリー病の酵素欠損を発見(Bradyによる)ヒト胎盤よりα-ガラクトシダーゼを精製ヒト胎盤から酵素を製精し,ゴーシェ病患者に投与(Bradyらによる)ライソゾームでの酵素取り込みにおけるマンノース-6-リン酸受容体(M6PR)を介したリサイクリング機構を明らかにする(Neufeldによる)マンノース-6-リン酸(M6P)が酵素の取り込みに重要と報告(Slyによる)胎盤由来の大量のグルコセレブロシダーゼを精製し,商品化に成功(Furbish,Bradyによる)マクロファージを標的とするグルコセレブロシダーゼの開発に成功 Genzyme社から胎盤由来のセレデース®の治験が開始 わが国においてセレデース®の治療が開始 遺伝子工学で作成したセレザイム®が発売1977年1981年1991年1994年1998年2000年2004年2001~ 2010年2020年2021年ファブリー病の酵素製剤ファブラザイム®,リプレガル®の治験が開始 わが国でファブラザイム®が発売 MPS I,II,IV,VI,VII型,ポンペ病,ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症(LALD)の酵素製剤の開発NCL2型の髄注による酵素補充療法(ブリニューラ®)が承認MPS II型での髄注での酵素補充療法,血液脳関門通過型酵素製剤(パビナフスプアルファ)のわが国での承認EUでレンチウイルスベクターによるMLD遺伝子治療(Libmeldy®)が承認2021年MPS:mucopolysaccharidosis(ムコ多糖症),NCL:neuronal ceroid lipofuscinosis(神経セロイドリポフスチン症),

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