26084つの視点でまるわかり!遺糞症・便失禁AtoZ
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3章治療―3.児童精神科医の視点 1 i. ゴール1:精神的な評価をする2章3(pp.103-112)で述べたように,遺糞症は不安などの精神障害と密接に関係します.そのため,発達障害や不安障害の鑑別を行います.発達障害や不安障害の診断には経過が必要という考えもありますが,主治医の診察はその子の生涯の一時点を観測しているにすぎません.また,外来での診察にも時間の限りがあります.診察を繰り返し行って診断をするというよりも,できるだけ情報を集めて早期に診断するということが大切かと思います.成人の診療でいえば,うつ病と診断するのに躊躇する場合には「抑うつ状態」と状態診断を行ったのちに診断を進めていきます.同様に精神科の児童外来でも状態診断を行いつつ,情報を収集し,診断を同定していきます.情報の収集には,初診時に母子健康手帳や通知表の持参をお願いしたり,表2-14(p.111)に示した心理検査を実施するということも含まれます. ii. ゴール2:子供との関係を構築する主治医と会話をすることが子供の治療のゴールになるわけではありませんが,会話ができるようになると家族とは違った情報が入手できます.メモこの際に大切なのは,本人だけでなく家族全体の精神的な評価を行うということです.親が子供の精神的な問題を否定したり矮小化したりするということもありますし,それによって問診が無効化するということもあります.そのため,子供の診察から診断が明らかな場合を除けば,複数の状況(幼稚園や学校)から情報の入手することが重要になります.189遺糞症がある子の3つのゴール

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