附録253特性がある子が多いんです.そのとき,すでに発達障害を診てもらっている子たちは,その担当の先生にお願いできるんですけど,まだ診てもらっていない子,もしくは,入院治療中に,心理士(心理師)に検査してもらって,かなり疑わしいときに,どうアプローチするとよいかってところが一つ質問としてあります.あとは,発達障害って診断されたくないって親が結構いて,一度あったのが,おばあちゃんが勝手に心理検査に答えちゃって全然評価できなかった.すると今度は発達障害の検査を受けること自体を拒否された.そうした背景があるなかで,ぼくらが発達障害を疑ったとき,どうアプローチしていくとよいか,現場でどうつないでいけばよいか,具体的な親への声かけなどが聞けたらと思います.角田 ありがとうございます.うちは児童精神科を掲げているので,くる時点で発達障害を疑っている人が多くて,あまり受け入れが悪いことはないんですけど,やっぱり学校関係者から「親は認めてないんだけど,成績が悪いから知的障害なんじゃないか」とか「発達障害じゃないか診てきてください」っていう人たちの受け入れは悪いんですよね.そういう人たちがきても,検査だけしたら終わりとか,やっぱりつながらない.一応見立てを伝えても,納得がいかないって人たちは一定数います.精神科は,発達障害と診断することが目標ではないので,あまり診断をつけることにはこだわっていません.特性があって問題があったら障害であって,特性があったからといって発達障害ではない.その特性に対してどうしましょうかっていうアプローチですかね.関係性ができてきたら,こういうことだろうねって伝えますけど,最初から診断するのではなくて,特性がある状態を認識したうえでしばらく診ていく.十河先生たちは診断つけて治療っていうガイドラインやアルゴリズムに則った流れでやってるんだと思うんです.われわれも診断することはすごく大事なんですけど,診断をする前に状態像,たとえばうつ病の前に抑うつ状態,抑うつ状態の原因としては適応障害の場合があったりする.そのなかで,この特性は障害由来だよね,環境のせいだよね,トラウマがあるからだよねって,最初の段階では,そういう症状とか特性をどうしようかっていう相談にのっていくイメージです.発達障害の特性をもつ子たちに対しては,人間としての今の状態を医学的に説明してあげる.十河先生の質問に対して答えるのはすごくむずかしくて,納得していない親は,受診動機の明確な人に比べると,労力はすごくかかるのに,無に帰すこともあります.そういう人たちは,学校側から「あなたの子供は発達障害である」っていうラベルを貼られて怒っているので,あえてそこでは診断をつけないほうが
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