か1つ(またはそれ以上)の形による曝露:D.心的外傷的出来事と関連した覚醒度と反応性の著しい変化E.障害の持続が1カ月以上F. その障害は,臨床的に意味のある苦痛,または両親や同胞,仲間,他の養育者との関係や学校活動における機能のG.その障害は,物質または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない表34. 発達性トラウマ障害と 1)発達性トラウマ障害 発達性トラウマ障害とは,ベッセルヴァンデアコーク(Bessel van der Kolk)が2005年に提唱した概念で,虐待を受けることにより脳に機能(器質)的変化が起き,臨床的に知的障害ADHD,うつ病,解離†,気分障害など多彩な精神疾患が併存して起きてくることを縦断面の診断としてとらえたものである.杉山登志郎も2007年の著書『子ども虐待という第四の発達障害』で,発達につれて1人の子どもが診断のカテゴリーを渡り歩く,発達障害と愛着障害の「異形連続性」について述べている(図2).2)複雑性PTSD 複雑性トラウマは,ICD‒11に採用された診Ⅳ章各論-その他の精神疾患A. 6歳以下の子どもにおける,実際にまたは危うく死ぬ,重傷を負う,性的暴力を受ける出来事への,以下のいずれB.心的外傷的出来事の後に始まる侵入症状C.心的外傷的出来事に関連する刺激の持続的回避,または認知と気分の陰性の変化障害を引き起こしているDSM‒5における6歳以下の子どものPTSDの診断基準(1)心的外傷的出来事を直接体験する(2)他人,特に主な養育者に起こった出来事を直に目撃する 注:電子媒体,テレビ,映像,または写真のみで見た出来事は目撃に含めない(3)親または養育者に起こった心的外傷的出来事を耳にする〔日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎・大野裕(監訳):DSM‒5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院2014:271-272より作成〕3 ストレス関連症(トラウマなど) 75†:意識の断裂.応である.安心感を失って,臨戦態勢を崩せなくなった結果,怒りの爆発,向こう見ずな行動,過度の警戒,過度な驚愕,不眠・集中困難などの症状が現れる.診断 前記の症状が1か月以上持続し,それにより顕著な苦痛感や社会生活,日常生活の機能に支障をきたしている場合に診断される.その出来事が起こった前後での日常生活の大きな変化に留意する.子どもでは,異常に甘える,外出したがらない,かんしゃくを起こしやすいなどの様子にも注目する.子どものPTSD DSM‒5では6歳以下の子どものPTSDは別カテゴリーとなり,診断基準も成人とは異なるものとなった(表3).障害の持続が1か月以上であり,臨床的に意味のある苦痛や家族関係や学校での機能障害を引き起こしていること,その障害は物質や他の医学的疾患の生理学的作用によるものではないことなどは,成人の診断基準と同様である.対応と治療についてはⅦ章 「6 虐待防止とトラウマケア」 p.160を参照されたい.複雑性PTSD
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