2613子どもの精神保健テキスト 改訂第3版
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1.境界知能の概念3.境界知能の人の特徴4. 支援が受けられないまま,青年期2.類似の用語Ⅲ章1境界知能は診断名ではなく,IQがおおむね70~84の知能のことを示す用語である.2グレーゾーンとは,発達障害の特性があるものの,診断を受ける前の人や診断に至らない人を指す.ボーダーは境界知能と同義で用いられるが,グレーゾーンの意味も含めて使用されることがある,曖昧な用語である.3境界知能は,一般人口の14%程度とされるが,単独では公的支援の対象外である.4境界知能は,軽度知的障害と臨床上の共通点があり,学校生活や社会生活に配・ 自分は普通と思っているので支援を拒否する.・ 所得が少ない,貧困率が高い,雇用率が低い.・ 片親が多い.・ 運転免許を取得するのがむずかしい.・ 栄養不足,肥満率が高い.・ 友人関係を結び維持することが困難,孤独に・ 支援がないと問題行動を起こしやすい.慮が必要なことも少なくない.POINT !各論-神経発達症(発達障害) 境界知能は,診断名ではなく,IQがおおむね70~84の知能のことを示す用語である.理論上は,一般人口の14%程度と推測されている(図1). IQでの判断上は軽度知的障害か境界知能かの区別はあり70~75を上回る場合は知的発達症ではないとみなされているが,実際の臨床では両者は共通点が多い.これはIQの数字上の区切りであり,実際は,生活上の困り感に大きな違いはなく,困っているところは同じであるにもかかわらず,一方は支援の対象となり,もう一方はならない. 境界知能の人は,学習上の困難さを抱えて教育機関でIQ測定を受けても,おおむね70以上であれば,学習支援の対象とならず,学習の問題だけでなく,自信喪失,叱責,いじめ,友だち関係が築けない,など二次障害を抱えやすく,青年期以降にも,持続して日常生活の困難さをかかえることも多い. グレーゾーンは,発達障害の特性があるもの46の,診断受ける前の人や診断に至らない人を指す.ボーダーとは境界知能と同義で用いられることが多いが,グレーゾーンの意味も含めて使用されることがある,曖昧な用語である(図2). 境界知能の人の臨床特徴を表1にまとめた. これは軽度知的発達症と共通していため,AAIDDの『定義』第11版には,成人の軽度知的障害者の特徴を抜粋する.・ 一般集団と明確に区別ができない.・ 要求度の高い仕事を与えられ失敗し自分のせいだと思う.なりやすい.以降を迎えると危惧されること境界知能,ボーダー,グレーゾーン6

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