2613子どもの精神保健テキスト 改訂第3版
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2.トラウマによるさまざまな病態1.トラウマ1) 愛着障害と愛着問題-トラウマ複合(ATC)Ⅳ章1トラウマとは,当人の対処能力を超えた出来事に対する精神反応である.2愛着障害の診断は,DSM‒5では,反応性アタッチメント障害と脱抑制型対人交流障害となる.3心的外傷後ストレス障害(PTSD)は,強い外傷体験の後に出現する侵入症状,回避症状,認知と気分の陰性の変化,覚醒度と反応性の著しい変化の症状で診断される.4発達性トラウマ障害とは,虐待を受けることにより生じる多彩な臨床症状を縦断的に見ていくもので,青年期以降の複雑性PTSDの診断に類似する.POINT !各論-その他の精神疾患 トラウマは「心的外傷」と訳され,当人の対処能力を超えた出来事を経験し,その後様々な心身の不調が持続的に現れる精神反応のことを指す. 戦争や自然災害,犯罪被害などで身体的外傷に伴うことを中心に研究がなされてきたが,ハラスメントや事故の目撃など,自身の身体的な外傷を伴わない場合でも起こるため,「出来事」の基準があいまいである.さらに,精神発達途上の小児に対し,成人と同じ概念を用いることについても,十分に議論されてきたわけではない. よい愛着形成はトラウマ耐性を作るが,虐待などで愛着形成に問題を残すと,些細な刺激がトラウマとなり,「易トラウマ性」をもつことになる.小児において愛着とトラウマは密接に関連するため,子ども特有のトラウマを理解する必要がある.70 愛着障害もATC(attachment problems‒trauma complex)も診断名として用いられていないが,愛着障害は一般に,ATCは日本のトラウマの臨床研究家に,用いられる用語であるため解説を加える.①愛着障害 愛着対象を失うことは,それが死別であれ離婚・離散であれ,子どもにとっては大きなストレスとなる.それまでの愛着形成がよい場合は,新たに養育してくれるよい対象者が現れれば,信頼関係を形成して新しい安全基地(養育者のこと.自立歩行が可能になった子どもが,時折養育者のところに戻ってきて皮膚感覚で安全を確かめ,再び探索行動を起こすことを保証する人のこと)を得ることもできる.しかし愛着形成に問題がある場合は,喪失した愛着対象者への複雑な感情が残り,新たな養育対象者と信頼関係を形成することは容易ではない. 愛着障害の基本概念は,安心・安全の得られストレス関連症(トラウマなど)3

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