2613子どもの精神保健テキスト 改訂第3版
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1トラウマを受ける対象が子どもである2トラウマ体験が繰り返される6精神面の二次合併症を予防できない.併存精神障害への発展6トラウマを受ける状態が日常である7トラウマを癒す場が欠如している8子どもの発達への影響が大きい表1表2452) 愛着障害⿟概念 すべての対人的状況で,子どもの反応性が持続的に著しく障害されていることをいう.虐待を受けた小児にみられる.Ⅳ章各論-その他の精神疾患1対人関係を築けない2情動のコントロールができない3子どもの社会的な行動の支えがない.倫理観を持てない4自尊感情を育めない5トラウマを乗り越えられず,新たなトラウマに発展しやすくなる3人間関係への信頼を崩す本来自分を守ってくれるはずの大人からのトラウマ体験である自分だけ,もしくは極めて限られた子どもに選択的に起こるトラウマである9ADHD like syndrome〔奥山眞紀子:虐待と愛着問題 トラウマ複合(ATC).奥山眞紀子,ほか(編).子どもの心の診療医になるために.南山堂,2008;198‒202より改変〕3 ストレス関連症(トラウマなど)  71愛着障害のある子どもの特徴虐待と愛着問題-トラウマ複合の特徴ない状態で育った子どもの状況のことである. 愛着障害の臨床的特徴を表1に示す.②愛着問題-トラウマ複合(ATC) 奥山が提唱した概念である.愛着の歪みがあって安全基地がよい形で形成されない易トラウマ性をもつ子どもが繰り返しトラウマを受けるとさらに他者を信じられなくなり,愛着形成に障害が生じる悪循環ができあがっていく状態のことである.後述する複雑性PTSDや発達性トラウマ障害に類似した概念で,臨床経過を示したものである. また,ATCの特徴を表2に示した.本来の愛着対象者である養育者が自身を守ってくれないため,人間不信が強くなり,身近な人への基本的信頼そのものが育たない状況になる.自分のことは自分で守らなければならない.⿟疫学と病因 養育者自身に大うつ病や精神病,物質乱用あるいは精神遅滞が存在することがあるが,必ずしもその状況下で自動的に反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害が生じるわけではない. 脳科学研究では,虐待を受けた子どもには様々な脳障害を示唆する所見が得られており,動物実験では,生後早期に母子分離したラットは攻撃性が増し,ストレス脆弱性および遺伝子異常が発現しやすくなる.これらの知見から,虐待やネグレクトを受けることで,脳に機能的・器質的変化が生じる可能性が推測される.⿟症状 5歳以前に出現し,虐待のほか,養育者の欠如や度重なる交代といったことが影響するとされている.反応性アタッチメント障害/反応性 愛着障害と脱抑制型対人交流障害に分けられる. 反応性アタッチメント障害は過度の警戒心,矛盾した行動が認められる.子どもの養育者に

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