第2章 診断という不確かなモノ目で見て、その子がどう育って、どう社会に出ていくのか」を考え、いまの本人にとって最適な支援が得られるよう働きかけたのだという。また、診断を得たあとの患者側の受容の問題もある。あるケースでは発達障害と診断した子どもについて、その母親は本やインターネットでいろいろと勉強し、療育プログラムなどを受けさせることに前向きになっていたが、同居している祖父母がそれを許さないということがあったそうだ。「うちの家系に限ってそんなことはない」と言って、孫に障害があること自体を認めたがらない祖父母に対して、担当の医師は何度もていねいに説明して納得をしてもらったという。本人や周囲が診断をどのように受け止めるかということは、その後どのような支援に結びつくかに大きく関わる。障害と聞いた瞬間に、患者によっては大きなショックを受け、「施設で一生暮らしていくというイメージが先行しているような」受け止め方をする場合もある。そういった誤解を解き、よりよい方向にその人の生活が変わっていくことも、発達障害の診療の大事な一部だと多くの先生たちは捉えていた。こうした「診断のその先」を考える視点は先生たちにとって、時に葛藤にもつながる。ある医師は、親とコンタクトがとれず成育歴を辿れない患者について、このように話している。ご本人申告で診断までつけるかどうかというのは悩ましくて、年金とかいろいろな問題69
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