2622発達障害を人類学してみた
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もともと、先に書いたように、家族などから成育歴を聞き取ることは、自閉スペクトラム症の診断において必要なプロセスなのだが、この人についてはそれがどうしてもとれない。そういった場合でも、診断のニーズが強ければ、医師によっては本人の話をおもな材料として診断に踏み切ることもあるとのことだが、この医師はその点について慎重になっている。その理由は、診断の正確さというよりは、障害年金の受給などで大きなお金が動くことにあるのだ。医師の書いた診断書があれば、開く扉があり、下りるお金がある。診断書というものがもつ社会的な力を熟知しているからこその葛藤だ。ところで、診断が下りたあと、多くの場合に患者は定期的に病院に通い続ける。こうした定期的な診療のなかで、具体的にどういったことをサポートしているのかを医師たちに尋ねてみが生じてくるから……たとえばこの人自閉症スペクトラム障害(ママ)だって診断して、就労困難な場合に、じゃあ年金を取得できました。五年間さかのぼって受給しちゃうと、何十万円なんてもんじゃないよね、何百万単位で発生してくるんですけど、その辺がやっぱり本人からだけの情報だとちょっと問題があるかなっていわれてることもあって、基本的に確定診断をつける場合はご本人だけじゃなくてご親族の情報も得てからと思ってることもあって、なかなか確定診断ができないんです。70  

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