2622発達障害を人類学してみた
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3 学校生活の様子間をかけて子どもたちに語りかけていた。異なる強みや弱みをもつ他者を受け入れ、協力しながら集団として一つになることを教えるのに、運動会はまたとないイベントであると同時に、先生たちのスキルが問われる機会でもあったのだ。続いて、普段の学習や学校活動のなかでの加藤くんと相原くんの経験をみていこう。加藤くんは不器用なところがあって、手を動かして何かをすることが全般に苦手だった。国語の授業で新しい漢字を教わって、ノートにそれを十回ずつ書くようにという課題では、元の漢字を間違えて書き写したり書いているうちに違う字に変わっていったりして、それを指摘されて消しゴムで消そうとすると力が強すぎてページ全体を破ってしまい、「あーあ、汚くなった」と嫌になってしまう、ということがしばしばあった。支援員としては、間違いはじめたらなるべく早い段階でそれを指摘することを心がけ、同時に山田先生に状況を説明して、間違えたら消すのではなく新しいページに書き始めるという対応について許可をもらった。しかし、こうしたことがあっても加藤くんは漢字自体には興味をもっていた。小テストのとき、窓の外をぼーっと見ているので集中できていないのかと思い、「いまは漢字テストの時間だよ」と声をかけると、加藤くんは外に見える二つの建物を指して「町」という漢字が、少し高さの違うその二棟の建86 

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