312リハビリテーション・マインドをしっかりもって!11A-3 少子高齢化社会となり,リハビリ医療がこれまで以上に必要となったことはすでに述べられているとおりであるが,その治療プログラムは質の高いものでなければならない.内科や外科,その他の診療科がこれまで行ってきた治療の計画と同じ考え方で遂行しようとすれば,質の高い障害者医療サービスを提供することはできない.ましてや,リハビリは医療のみでなく社会福祉と保健につうじる分野であるため,それに応えられる確固たる医療哲学をもつことが重要である. リハビリ医療に携わる医療従事者に要求される医療哲学は「リハビリ・マインド」と呼ばれている.その内容は,一般社会人にとっては決して特別なものではないが,他の診療科に属する医療従事者には忘れ去られてしまった心であるかもしれない.医学・医療の進歩によって各医療従事者が扱う専門分野は細分化され,狭く深い領域に向かっている.それは,現代社会が作り出した産物である.それに対して,リハビリ医療は,より広く患者を人間として診る診療体系であるから,ごくあたり前と考えられる「リハビリ・マインド」をもっているべきだといわれている. 実際には,「リハビリ・マインド」とは一言では表現し難く,人によって解釈が異なるかもしれない.しかし,それをあえて簡単にいい表すと,「障害を診る心をもつ」「障害者の社会復帰・社会参加を目指す」「チームを大事にする」という3つの側面をもっていると考えられる.以下に,その概略を説明する. 一般の内科医や看護師が患者の治療に専念するときには,まず疾患を考える.例えば,「肺炎」を診断した医師は抗菌薬によって肺を正常化しようと考える.看護師は熱を測ったり,呼吸の状態を観察したりする.「胃潰瘍」を診断した医師は潰瘍治療薬によって胃を正常化しようと考え,看護師はストレス環境を取り除くよう配慮する.しかし,障害に対する治療を扱うリハビリ医療の現場では,このような疾患を診る考え方だけでは適切に対処することはできない. 例えば,「脳卒中による片麻痺」を診断した場合,適切なリハビリ医療を遂行したとしても脳は正常化されることはない.片麻痺という症状についても,重度の場合にはその大半は治ることなく,後遺症として残存する.では,リハビリ医療は無効であ 医療は,内科,外科,小児科というふうに大きく区分されているだけでなく,時代とともに細かく臓器別に分けられる傾向にある.例えば内科は呼吸器内科,循環器内科,消化器内科,内分泌内科,腎内科,血液内科というように,多くの診療科に分けられるようになった.専門的な知識によって詳細な検査や治療が行われる反面,他分野の知識が乏しくなるという欠点もある. 医療の現場には,医師のほかに看護師,栄養士,臨床検査技師,放射線技師,薬剤師,臨床工学技士など多くのコメディカルが働いている.リハビリではさらにPT,OT,STその他の職種が働いている.チーム医療はこれらの職種が単に集まればよいというものではなく,互いの専門性を尊重し協力し合って最良の医療を遂行することが重要である.詳細は後述参照. 右側の上肢と下肢が同時に運動麻痺を生じることを右片麻痺という.逆に左側の上肢と下肢の麻痺は左片麻痺という.左側大脳の障害では右片麻痺となる.専門分野の細分化チーム医療片麻痺リハビリテーション・マインドの重要性障害を診る心をもつリハビリテーション・マインドをしっかりもって!
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