2627リハビリテーション総論 改訂第4版
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能力低下(能力障害)の評価方法を習得しよう12 排尿と排便の管理を表しているが,FIMでは「失禁」ではなく「失敗」としている.失禁は身体機能によるものであるため機能障害に含まれるが,失敗は生活の視点からみるため,能力障害に該当する.失禁する患者でも自分で紙オムツを装着し,自分で取り替えることができれば,介助や迷惑とならないため失敗とみなされない.91A-16 機能障害の評価の項でも述べたが,能力低下とは機能障害によって患者個人の能力や活動が低下した状態のことである.言い換えると,機能障害によって日常生活を含む社会生活に必要な動作ができなくなっている状態である.能力低下は生活全般において,直接的な影響を及ぼす.そのため適切な評価をして,問題点を明確にしなければ,障害をもった人たちのQOLを大きく低下させることになる.また疾患や機能障害のみに焦点をあてるのではなく,この能力低下を評価して治療対象にすることが,リハビリ医療の1つの特徴ともいえる.これらのことから能力低下の評価は非常に重要であり,かつリハビリ医療に携わるスタッフは必ず理解していなければならない事項となる.本項では,能力低下の代表的な評価方法をいくつかあげて,簡潔に説明 する. 能力低下の代表としては,日常生活活動(activities of daily living:ADL)障害があげられる.1976年に日本リハビリテーション医学会評価基準委員会はADLの範疇として,「一人の人間が独立して生活するために行う基本的な,毎日繰り返される共通の身体動作」と定義している.すなわち人それぞれ生活スタイルは異なるが,それに関係なく,1人で生活していくために必要な最低限の動作をADLという.具体的には食事・整容・更衣・移動(車椅子や歩行)・移乗・トイレ動作・入浴動作・排泄コントロール・認知項目などがあげられる.ADLの内容は,健常者にできて当然と思われる項目であり,普段は意識をせずにしていることがほとんどである.ADLはQOLを大きく左右する因子であり,介助者なしで生活できるか否かを判断するために重要な評価項目であるため,しっかりと評価する必要がある.またリハビリを行っていくうえで,その効果の有無をみるためにもADL評価は重要となる. 過去に報告されているADL評価方法としては,B法(Functional Independence Measure:FIM),KCare Evaluationなどがあるが,国際的によく用いられているのがFIMである.2000年頃までよく用いられてきたBarthel Indexでは,食事・移乗・整容・トイレ・入浴・移動・階段昇降・更衣・排便・排尿の10項目を,表A-16-1のような基準で採点する.バーセルarthel Index,機能的自立度評価カッツatz Index of ADL,Kケニーenny Self- 認知機能は通常は機能障害として捉えられ,例えば記憶障害であればWMSなどで評価される.ADLの中に取り入れられている内容は,より生活に密着するものとして,FIMでは「リハビリ訓練の担当である療法士を知っている」とか「他人に迷惑をかける行為をしない」という内容を評価している.これが能力低下に該当するかどうかは,判断の難しいところである.排泄コントロール認知項目能力低下の評価の意義日常生活活動の評価方法能力低下(能力障害)の評価方法を習得しよう16

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