2627リハビリテーション総論 改訂第4版
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712246 脊髄とは脊椎管の中を頭側から尾側に向かって走る中枢神経組織で,その高さによって,頸髄(C1〜C8),胸髄(T1〜T12),腰髄(L1〜L5),仙髄(S1〜S5)と名づけられている.そして,各髄節の左右から対になって脊髄神経が出入りして体の感覚,運動を司っている.脊髄はこの脊髄神経と脳との連絡通路となっている.また脊髄は自律神経とも連絡がある.脊髄は脊椎や靭帯,髄液によって外界から保護されている. 脊髄損傷の多くは脊椎損傷に伴ってひき起こされる.すなわち脊椎に大きな外力が加わり,骨折,脱臼などが発生するのと同時に,その中を通る脊髄に挫滅,圧迫などを生じるのである.しかし,脊椎に骨折を生じなくても脊髄損傷をきたす場合もあり,この大半は不全損傷である. 多発年齢は20歳代と60歳代の二峰性となっている.交通事故や労働災害での外傷性脊髄損傷による若年者の受傷がみられる.また高齢者では,脊椎(特に頸椎)に加齢変化が生じて脊髄を囲んで保護している脊椎管に狭窄部分や軽度圧迫部などがあれば,転倒や転落によって比較的容易に損傷がひき起こされる. 脊髄損傷が起こると損傷された部位以下で運動,感覚機能が障害される.また,様々な合併症を起こす.脊髄損傷はその日常生活への影響の大きさ,合併症のリスク管理などから,リハビリの対象となる重要な疾患の1つである. 症状の把握には2つの情報が必要である. 1.部位診断(脊髄のどの高位での損傷か):運動,感覚が正常機能をもつ最も下位の髄節を損傷高位とする.例えば,第7頸髄の機能は正常で第8頸髄の機能が低下していれば,神経損傷高位診断は第7頸髄節レベルとなる. 2.完全損傷か不全損傷か:①完全損傷:損傷髄節以下の髄節支配域の運動・感覚機能が完全に喪失しており,さらに脊髄の最下位である仙髄節(S4-5)の運動,感覚機能が完全に喪失しているもの.②不全損傷:損傷髄節以下の髄節支配域の運動感覚機能が部分的に残っているもの.完全麻痺にみえても脊髄の最下位である仙髄節(S4-5)の運動,感覚機 脊髄の髄節数は椎骨の数とは一致していない.頸椎は7椎,胸椎は12椎,仙椎は癒合して一個の仙骨となっている.第1頸髄神経は頭蓋と第1頸椎(環椎)の間から出るが,第1胸髄神経は第1胸椎と第2胸椎の間から出るので間違えないように注意したい. 肛門括約筋を意図的に収縮することができる. 肛門周囲,肛門内の感覚がある.髄 節仙髄節(S4-5)の運動機能仙髄節(S4-5)の感覚機能疾患についての理解症 状脊髄損傷

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