2629看護・医療系スタッフのための質問紙作成ワークブック改訂第2版
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研究目的実態の把握要因の特定介入効果の検討群内比較試験群間比較試験10おもな研究デザイン横断研究後ろ向き研究前向き研究「現時点」の1回の調査で実態を把握「現時点」の事象の要因を現在,あるいは過去にさかのぼって特定事象の発生に関連性が予測される情報を「現時点」で得て,一定期間あけて繰り返し調査し要因を特定ある介入を行い,その効果を介入の前後で比較して検討ある介入を行う群,行わない群を設け,介入の効果を群同士で比較検討 みなさんは,「質問紙を用いた調査」と聞いて,どのような調査を思い浮かべますか? 「調査」ですから,漠然と質問が並んでいる用紙を使って調べものをしているのではなく,何かを調べるために実施しているわけです.その「何か(明らかにしたいこと)」は,その調査の目的といえます.ここでは,質問紙を用いた調査の目的を次の3つ,①実態の把握,②要因の特定,③介入効果の検討に分けて紹介します.そして,それぞれの目的によく使用される研究の型(研究デザイン)についても述べていきます(表2—1のまとめもご覧ください).表2—1 研究目的とおもな研究デザイン特徴 物事の全体像や人々の考え方などを把握する調査として,たとえば,国勢調査に代表される生活実態調査,病院で患者さんに実施している満足度調査,ある疾病に罹患している人の割合を調べる有病率調査などがあげられます. 調査実施の回数や時期ですが,実態の把握を「現時点」で行いたい場合には,1回だけ調査を行います.これを横断研究(cross‒sectional study)といいます.国勢調査や世論調査などのように年に1回など,特定の間隔をあけて行う連続調査も横断研究の一種です.調査ごとに対象者が変わるため,同じ対象者に対して何度も調査を行う研究〔前向き研究(prospective study)〕とは研究デザインが異なります. 次の図2—1に横断研究における,時間軸上のみなさんの位置と調査実施時期を示します. 2 要因の特定 ある事象が起こる,あるいは生じる要因を特定する調査として,たとえば,疾病と生活習慣の関連性を調べる調査,喫煙や飲酒行動を抑制する要因を調べる調査,患者さんの心理的苦痛を軽減する要因を特定する調査があげられます.第2章 質問紙を用いた調査について理解しようどのような研究で質問紙を使う? ~研究目的と研究デザイン 1 実態の把握2.1

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