診断と治療
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2024年 Vol.112 No.増刊号 2024-03-26
よくわかる!精神疾患対応 これ1冊
定価:7,920円(本体価格7,200円+税)
巻頭言 尾崎紀夫
第1部 精神科との相互理解を基盤とした連携に向けて
1 精神疾患の診断とは 三嶋 亮,他
2 精神疾患の薬物療法 横山貴之,他
3 精神療法と心理社会的アプローチ 中川敦夫
4 身体疾患に伴う精神医学的問題と精神疾患の身体医学的問題リエゾンコンサルテーション精神医学の重要性 明智龍男
5 精神疾患の原因となりうる身体疾患および医薬品 西村勝治
6 精神疾患患者・家族として,精神科医・非精神科医の先生方へ望むこと精神疾患と身体疾患とのかかわりについて 夏苅郁子
第2部 精神科との連携が特に必要な領域
1 がん患者の精神心理ケア 藤澤大介
2 自殺念慮を訴える患者への対応 石橋竜太朗,他
3 学校教育における精神疾患 片桐直之,他
4 児童虐待への対応 菊地紗耶,他
5 産業精神保健 井上幸紀,他
6 精神疾患に伴う肥満や糖尿病 永井佑樹,他
7 精神疾患患者(周産期発症を含む)の妊娠出産 鈴木映二,他
8 せん妄 大朏孝治,他
9 摂食症(摂食障害) 田中 聡
10 救急現場での精神疾患対応 新井久稔,他
11 精神科救急医療体制 日野耕介
12 抗NMDA受容体抗体脳炎等の辺縁系脳炎 髙木 学,他
13 精神疾患を含む多臓器疾患を伴う遺伝性疾患 久島 周
14 精神疾患に関する遺伝カウンセリング 堀内泰江,他
第3部 知っておきたい精神疾患 各論1:神経発達症
1 自閉スペクトラム症 岡田 俊
2 注意欠如多動症 髙橋長秀
3 知的発達症(知的能力障害) 小川しおり
4 チック症 金生由紀子
第4部 知っておきたい精神疾患 各論2:不安症・強迫症・ストレス性疾患
1 パニック症 清水栄司
2 社交不安症 朝倉 聡
3 限局性恐怖症 音羽健司
4 強迫症 村山桂太郎,他
5 心的外傷後ストレス症(PTSD)と急性ストレス症(ASD) 森信 繁
6 適応反応症(適応障害) 平島奈津子
7 身体症状症 徳倉達也
第5部 知っておきたい精神疾患 各論3:気分症・統合失調症・物質使用症・パーソナリティ症
1 うつ病 櫻井 準
2 子どものうつ病 宇佐美政英
3 老年期のうつ病 前嶋 仁,他
4 双極症(双極性障害) 松尾幸治
5 統合失調症 鈴木道雄
6 物質使用症(物質使用障害) 松本俊彦
7 行動嗜癖(ギャンブル・ゲーム行動症) 樋口 進
8 ボーダーラインパーソナリティ症(境界性パーソナリティ障害) 木村宏之
第6部 知っておきたい精神疾患 各論4:睡眠障害
1 不眠障害(不眠症) 三島和夫
2 閉塞性睡眠時無呼吸 舟橋孝太,他
3 概日リズム睡眠・覚醒障害 大槻 怜,他
4 レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)・周期性四肢運動障害 井上雄一
5 レム睡眠行動障害 塚田聖子,他
6 ナルコレプシー 千葉 滋,他
第7部 知っておきたい精神疾患 各論5:認知症
1 認知機能の評価 鈴木麻希,他
2 Alzheimer型認知症 文 鐘玉,他
3 前頭側頭型認知症 田村昌士,他
4 Lewy小体型認知症の多様性を知る 前駆から終末期まで 小林良太
5 血管性認知症 常泉陽介,他
6 特発性正常圧水頭症 數井裕光
第8部 知っておきたい最近の精神疾患関連トピックス
1 精神疾患診療ガイドラインの普及活動 堀 輝,他
2 統合失調症などの精神疾患と認知症の関係 鳥居洋太,他
3 精神科のゲノム医療 宮田雅美,他
4 ウェアラブルデバイスを用いた精神疾患の評価 高江洲義和
5 コロナ禍を含むCBRNE災害がメンタルヘルスに与える影響 國井泰人
6 COVID-19罹患後に持続する精神神経症状への対応 木村大樹
7 ひきこもりの多面的理解とその対応 加藤隆弘
8 脳画像の精神疾患領域への応用 小池進介
9 反復経頭蓋磁気刺激療法 鬼頭伸輔
10 末梢血を用いた精神疾患バイオマーカー 毛利彰宏,他
11 向精神薬・精神疾患と自動車運転 岩本邦弘,他
12 精神疾患ブレインバンク 髙尾昌樹
13 オンラインメンタルヘルス体制 竹田和良
14 オンライン精神科診療 木下翔太郎,他
筆者は精神疾患の患者・家族会での講演や会報への執筆の依頼を受けた際,事前にアンケートを実施してきた.このアンケートは,話題にすべき内容や患者・家族が抱える疑問や悩みについて把握するためのものである.その結果,多くの精神疾患患者が身体的な問題について悩んでいることが判明した.そこで最近のアンケートでは,「どんな身体的なことで困っているか?」を確認することにしている.たとえばそのうちの1つによると,約半数の患者が選んだ頻尿,肥満を筆頭に,口渇,いびきが3割を超え,便秘,多尿,高血圧,耐糖能異常も2割を超えていた.精神科医として患者の身体面に一層の関心をもつと同時に,精神疾患患者の「身体的な問題を解決してほしい」という期待に応えるためには,精神科医と内科医をはじめ複数の診療科に属する医療関係者間の連携が不可欠だという認識を深めた.
わが国では,約150万人の統合失調症患者が外来治療中で,約34万人の患者が入院中であり,うつ病や双極症の患者数は約300万人,自閉スペクトラム症や注意欠如多動症などの神経発達症の患者数は約84万人,認知症の患者数は約230万人に上るなど,精神疾患の発症頻度は高い.これら精神疾患はいずれも身体疾患を併発することが多く,たとえば2022年に米国精神医学会が発表したDSM-5-TRの統合失調症の項には,「関連する医学的疾患のために患者の平均余命は短い.体重増加,糖尿病,メタボリックシンドローム,心血管疾患や肺疾患は,一般人口よりも頻度が高い」と記載されている.また身体疾患は精神疾患を合併するリスクが高いことも周知の事実である.
したがって,精神疾患と身体疾患を併発する患者が,内科をはじめとする様々な診療科,そして精神科の双方を受診することは極めて多い.一方で,精神疾患の診断や評価は基本的に精神症状に基づいており,他の疾患と異なり,有用な検査法は乏しいのが現状であり,精神科医以外の医療関係者にとっては,精神疾患の理解が困難になることも想定される.
以上を踏まえ,本企画では,内科等の診療科と精神科の医療関係者間の相互理解を基盤とした連携によって,患者・家族の期待する医療の実現を目指した.さらには近年の精神科医療・精神医学の動向にもふれ,今後の医療・医学の発展にも寄与することを企図した.
名古屋大学大学院医学系研究科精神疾患病態解明学
尾崎紀夫
注:米国精神医学会の診断基準DSM-5のテキスト改訂版であるDSM-5-TRが2022年に出版されたのを受け,本書ではこのDSM-5-TRで大幅に変更となった疾患名の日本語訳を反映させた.具体的には,disorder(s)の訳を「障害」から「症」に変更した.