産科と婦人科
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充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2024年 Vol.91 No.9 2024-08-19
ホルモン療法の使い分けと使用中・使用後のあるある
定価:3,190円(本体価格2,900円+税)
企画 五十嵐敏雄
Ⅰ.生殖可能年齢の病態あるある
1.卵巣チョコレート囊胞など子宮内膜症に対するホルモン療法の使い分けと長期使用 / 金子明夏・他
2.子宮腺筋症に対するホルモン療法の使い分けと不正出血 / 石沢千尋・他
3.子宮筋腫に対するホルモン療法と筋腫のサイズ / 鎌田泰彦
4.月経困難症・過多月経に対するLEPもしくはDNG療法の使い分けと投与法と長期使用 / 江頭活子
5.無月経に対するホルムストローム療法・カウフマン療法,LEPの使い分けと開始時期と効果 / 森 泰輔
6.多囊胞性卵巣症候群に対するクロミフェン・レトロゾール・FSHなど排卵誘発薬の使い分けと効果 / 岩佐 武・他
7.一般不妊治療ならびに生殖補助医療の排卵誘発・排卵トリガーの使い分けと効果 / 土信田雅一・他
8.一般不妊治療における黄体機能不全,生殖補助医療の黄体補充の使い分けと効果 / 土屋貴裕・他
9.乳汁分泌症,高プロラクチン血症に対するホルモン療法の使い分けと薬剤性高プロラクチン血症の管理 / 合阪幸三
10.妊娠中・不妊治療中の甲状腺機能低下症に対するホルモン療法の使い分けと薬剤性高プロラクチン血症の管理 / 赤水尚史
11.プロゲストーゲンによる早産防止効果―エビデンスの現状― / 永松 健
12.避妊・緊急避妊・月経移動のためのホルモン療法の使い分けと効果 / 並松響子・他
13.妊娠希望のある子宮内膜異型増殖症,初期子宮体がんにおけるホルモン療法―レボノルゲストレル放出子宮内システムで代用可能か― / 坂井健良・他
Ⅱ.閉経後ならびに周閉経期の病態あるある
14.更年期症候群・早発卵巣不全に対するホルモン療法の使い分けと期待される効果・投与法・長期使用 / 石谷 健
15.萎縮性腟炎・閉経関連尿路生殖器症候群(GSM)に対するホルモン療法の使い分けと期待される効果・投与法・長期使用 / 吉形玲美
連載
漢方よもやま話 第9回
補中益気湯 / 能㔟充彦
弁護士が答えます!法律にまつわるあれこれ
日本で未認可の薬が有効なので使いたいけれど,どうすればいいの? / 粟野公一郎
専門医・認定医をとろう!私の体験記 第15回
女性のヘルスケア研修会修了者(日本女性医学学会) / 櫻井香織
症例
子宮内膜症に伴う慢性骨盤痛に対して交番磁界を用いた治療機器(AT-04)が有用であった1例 / 合阪幸三・他
ホルモン療法は産婦人科医にとって外来診療における切札である.その対象疾患は多岐に及び,その効果はほかの薬剤と違って切れ味が鋭いことが多い.そして,それでも埒が明かない場合は手術療法という最後のカードを切らざるを得ない.切札のホルモン療法にも,最近は複数の選択肢があってどのカードを切ったらいいか困る場合に,自分の好みのカードばかりを切っている方もおられるのではないか.切札を切った後でも副作用対策やいつまで使うかなど使用中や使用後によくある疑問に対して答えがない場合に,独自の方法を試されている方もおられるのではないか.
ホルモン療法が活躍する状況は,無月経,月経不順,排卵障害,不妊症,生殖補助医療,過多月経,月経困難症,月経前症候群,更年期障害,卵巣欠落症状,骨粗鬆症予防,避妊と緊急避妊,子宮内膜増殖症,子宮体がん再発予防,切迫早産など,婦人科から産科まで広範囲に及ぶ.病態別にみることで使用する薬の選択肢が絞られ,そのなかから最終的にどのホルモン療法にするかは患者に選んでもらうことになるが,患者の状況,年齢,月経の状況,血圧,喫煙の有無,乳がん合併の有無,患者が何に困っているか,何を優先して希望しているのか,いつ頃に妊娠を希望しているかなどの情報から医師側が見識をもって患者を誘導することはある程度必要である.
また,薬の使用中・使用後のよくある副作用として不正性器出血があり,少ないけれども深刻な副作用として深部静脈血栓症や長期使用による骨密度減少の懸念がある.さらにホルモン療法をいつまで継続するのか,ホルモン療法継続中にどうやって閉経を判断するかなどの疑問もある.こうした懸念や疑問に対する具体的な答えはあまり教科書に書かれていないが,専門家の外来では様々な予防や対策がなされているものである.
本特集は,「ホルモン療法の使い分けと使用中・使用後のあるある」と題して,ホルモン療法を多く処方されているベテランの先生方にご執筆いただいた.本特集が読者の疑問を解決し,皆様のホルモン療法のレベルアップになって,患者がその恩恵にあずかることを期待してやまない.
(帝京大学ちば総合医療センター産婦人科 五十嵐敏雄)