特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドライン
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―わかりやすい診断手順と支援の実際―
特異的発達障害の臨床診断と治療指針作成に関する研究チーム 編集
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所知的障害研究部部長
稲垣 真澄(いながき ますみ) 編集代表
初版 B5判 並製 148頁 2010-05-27
ISBN9784787817815
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特異的読字障害・特異的算数障害の診断用検査シートと詳細な解説から成るガイドライン.特異的発達障害を的確に判断・支援できる,小児科医はもちろん教育関係者も必読の一冊.
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目次
Contents
I章 特異的読字障害
A 診断手順
診断手順概要
読み書きの症状チェック表
サマリーシート
①単音連続読み検査
②単語速読検査
③単文音読検査
健常児データ
B 定 義
①学習障害の定義
②読字障害の定義
③本書における用語表現について
C 病 態
①発生機序の仮説
②読字障害関連遺伝子
③機能障害部位
D 疫 学
①アルファベット語圏における有病率の推定
②性差について
③書字表出障害,算数障害およびADHDとの関係
④わが国における有病率の推定
E 臨床症状
①発達性ディスレクシアの症状
②発達性ディスレクシア以外の読字障害
③文字を書く
④臨床経過
F 診断・評価および検査法
①診断・評価
②検査法
G 治療的介入
1.大阪LDセンター方式
2.鳥取大学方式
3.東京学芸大学方式
H 併存症・二次障害
①総 論
②読字障害に対する有益な支援~併存症・二次障害の観点から
③ADHD合併例の特徴とその支援
④広汎性発達障害児に認められる特異的発達障害
I 成人例の特徴
①成人領域におけるディスレクシア(読字障害)の評価法
②成人のディスレクシアの様相
③支援のあり方とコーピング
II章 特異的算数障害
A 診断手順
診断手順概要
①算数障害の症状評価のための課題
②算数思考課題
健常児データ
B 概論と支援の実際
①定 義
②臨床特徴
③検 査
④指導の実際
⑤臨床経過
プラスワン
わが国でのDYX1C1遺伝子変異スクリーニング検査の現況
脳機能障害部位に基づく読字障害のサブタイプ:日本人小児における研究
大細胞系(magnocellular system)機能とマグノVEP
仙台市の小学校児童におけるSRD有病率の推定
教育現場との連携の実際
併存症・二次障害の予防へむけての課題
ADHD症状と読字困難との関連
岡山大学小児神経科の調査
特別支援教育の法律・制度
トピックス
Williams症候群における学習のつまずきと支援の実際
索 引
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序文
はじめに
特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドライン─わかりやすい診断手順と支援の実際─をお届けします.
発達障害者支援法の施行から早5年が過ぎました.この間,自閉症・アスペルガー症候群など広汎性発達障害やADHD(注意欠如・多動性障害)についての関心が深まり,“ちょっと気になる子どもたち”の行動や社会性にかかわる相談が一般小児科の外来場面でも日常茶飯事となっています.一方,国語や算数など学習のつまずきは学校や家庭といった教育場面の問題であることと,学習障害の概念がわかりにくいということのため,検査を含めた正しい診断法や治療指針の手順が医療関係者の中でも定まっていない,という状況にあるのではないでしょうか.
文字の読み書きや算数のつまずきを主訴に受診された子どもたちを最初にみる医師にとって,通常の外来で的確な診断をする方法や指導アドバイスにつながる治療指針を参照できるといいな,という素朴な発想から生まれたものが本書です.特異的発達障害のうち,比較的臨床現場で経験することの多い「特異的読字障害」や「特異的算数障害」に焦点をあてて,どなたにもわかりやすい内容をもつ“実践的な診断・治療ガイドライン”を目指しました.
はじまりは,平成19年よりスタートした精神・神経疾患研究委託費による「神経学的基盤に基づく特異的発達障害の診断・治療ガイドライン策定に関する研究班」でした.研究班の中に,診断手順と介入指針を検討する有志の集まりができ,そのチームによって企画され,3年間にわたる議論の末に本ガイドラインは生まれたのです.そのため執筆者は,上記研究班の班員と協力者という,わが国の本領域におけるエキスパートの方々が中心となっています.
内容は,特異的発達障害に関する具体的な診断手順と詳細な説明から構成されています.前者は,外来で遭遇した子どもたちの検査・評価をすぐに行えるように工夫されています.後者では,定義,病態,臨床症状,診断検査,二次障害そして介入法が詳述されています.また,研究班員による業績・知見は,プラスワンという項目を作って別記してあります.症例の紹介では,指導の実際がポイントとともに見やすい表示を心がけました.従いまして,この部分の参照だけでも理解が深まることでしょう.また,トピックスとして,Williams症候群を取り上げました.この症候群に対する支援策は,多くの子どもたちの読み書き指導において参考になる点があると思っています.
私たちは本ガイドラインを,読み書き障害や算数障害で悩んでいる子どもたちのために是非とも役立てていただきたい,と願っています.しかしながら本書は完成品ではありません.使用していく中で,色々な問題点も出ることでしょう.用語や内容に関しての統一性を保つように細心の注意を払ったつもりですが,誤りがみられた場合,その責務は代表である私が負うべきものと考えます.
最後に,研究チーム内のやりとりを集約し,獅子奮迅の活躍をしてくれました,知的障害研究部研究生の小林朋佳先生に感謝するとともに,限られた時間内に書籍化を果たすべくご努力いただいた,診断と治療社編集部の柿澤美帆さんと小林雅子さんに,厚く御礼を申し上げる次第です.
2010年5月吉日
特異的発達障害の臨床診断と治療指針作成に関する研究チーム 代表
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
稲垣真澄