2584帯状疱疹診療Q&A
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123swerswer2A1A帯状疱疹の重症度評価,合併症119運動神経麻痺の発症機序は?運動神経麻痺の臨床症状は?運動神経麻痺の治療と予後は?帯状疱疹では,再活性化した水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus: VZV)が知覚神経を傷害するために痛みが生じるが,運動神経麻痺を引き起こすことがあり,「分節性帯状疱疹麻痺(segmental zoster paresis: SZP)」と呼ぶことがある.最も有名なのはラムゼイ・ハント症候群(Ramsay Hunt syndrome)であるが,これについては別項で解説する.運動神経麻痺の頻度は,全帯状疱疹の0.5〜5%程度と稀である.多くは帯状疱疹の皮疹出現から3日〜2週間に麻痺を発症している.運動神経麻痺が起こる機序として,再活性化したVZVが脊髄後根神経節から脳脊髄液を介して脊髄前角細胞,前根,遠位神経に直接伝播または間接伝播し,その結果,運動神経の損傷と機能変化が引き起こされると考えられている(図1).運動神経麻痺発症のリスクファクターとしては,高齢(70歳以上)に加え,糖尿病や種々の原因による免疫不全が考えられる.帯状疱疹による脊髄神経の侵襲は胸椎領域が最も多い.しかし,胸椎上部の神経根が侵されても分節性肋間神経麻痺の症状は一般に自覚されにくいため,比較的明らかな臨床症状を呈するのはわずか1%程度とされる.一方,下部胸郭の脊髄神経が侵されると,腹筋麻痺や腹壁突出といった臨床症状が現れることがある(図2).腹筋麻痺に最も影響を及ぼす皮膚分節は第10〜12胸椎領域とされる.腹筋麻痺の患者の一部は腹部ヘルニア様の症状を示す.腹部領域の運動神経麻痺を呈する患者は,胃腸障害(便秘や偽性腸閉塞等)など他の臨床症状を併発することがある.四肢領域の運動神経麻痺は比較的稀である.四肢の運動障害を有する帯状疱疹患者では,下肢に比べて上肢の病変が多い.また,下肢の運動障害を有する患者では,第1〜4腰椎領域が最も多く影響を受ける神経支配領域であり,四肢脱力の重症度は軽度から重度まで様々である.臨床症状は,同側の肩や腕の麻痺の場合,患肢の挙上困難や屈曲困難として現れる.下肢の運動障害は,筋力低Question 30 帯状疱疹の運動神経麻痺とは?nnⅤTips運動神経麻痺の発症機序は?運動神経麻痺の臨床症状は?帯状疱疹の運動神経麻痺とは?Question3030

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