まえがきこの本を買ってくださった皆様,買おうかどうか迷っているけど気になって手にとっていただいた皆様,ありがとうございます! この本は“大ちゃん先生”こと,渡辺大輔(筆者)が一人で書いた帯状疱疹の本です.筆者は,これまでに様々な場所(47都道府県制覇!),様々な聴衆を前に帯状疱疹関連の講演を行い,またいくつもの総説を書いてきました.そして,そのような場で多くの質問をいただき,「帯状疱疹の診療を行う医師は多いのに,まだまだ帯状疱疹のことを十分に伝えきれていない」と感じる場面が少なからずありました.そのような背景から,「帯状疱疹について全般的に学べる機会を作れないだろうか?」と考えるように至ったことが,この本を執筆する最大のモチベーションとなりました.分担執筆による教科書を作成するという考えもありましたが,トーンを統一するために,また「蓄積した自分の知識を集大成としてまとめてみたい」という思いもあり,単著の道を選びました.この本は,帯状疱疹に関する様々な質問(基礎,病態,疫学,診断,治療,予防)に答える形で構成しました.ガイドラインと異なるのは,ガイドラインが集合知でできているのに対して,本書は筆者一人ですべてを書いている,いわば“エキスパートオピニオン”で成り立っているという点です.ファクトチェックはより厳しく行ったつもりですが,「これは違う」というところがありましたら,次の版に向けてぜひ教えてください・・・本書では,目次にある65のクエスチョンから,読者の皆様が「今知りたいこと」,「興味があること」を自由に選び,読んでいただくことを想定しています.“Column”にはファクトと離れた筆者の自由な意見を,“Coffee Break”には筆者と帯状疱疹の関わりの歴史(?)を記しました.本編が「知っていることばかりだ」とか,「面白くない」という方々にも興味深くお読みいただけるのでは!?「帯状疱疹」という疾患は,皮膚科医だけが取り扱うものではありません.かかりつけ医を含め,様々な立場の医師が関わる疾患であり,また単なる皮膚感染症ではなく,知れば知るほど奥の深い病気です.知っておかなくてはならない事柄は多いけれど,少し踏み込んでみると経験が深まり,学ぶことでより知識が深まり,よりよい診療につながっていくのではないでしょうか? この本をきっかけとして,ぜひ奥深い帯状疱疹の世界を感じていただければと思います.2024年春,筆者敬白はじめにiii
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