2588先天代謝異常症クリニカルファイル
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Mムコ多糖症N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼN-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼβグルクロニダーゼヒアルロニダーゼ ムコ多糖症(mucopolysaccharidosis: MPS)は,ムコ多糖の分解に関わるライソゾーム酵素の活性低下により,未分解のムコ多糖が細胞内に過剰蓄積し,細胞・組織・臓器障害を引き起こす先天代謝異常症である.ムコ多糖は,アミノ糖とウロン酸からなる多糖体であり,デルマタン硫酸(dermatan sulfate),ヘパラン硫酸(heparan sulfate),ケラタン硫酸(keratan sulfate),コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate),ヒアルロン酸(hyaluronic acid)などに分類される.これらのムコ多糖は,生体内では全臓器に広く分布しており,特に結合組織,軟骨,神経組織などに多く存在する.これらのムコ多糖の過剰蓄積において,デルマタン硫酸は骨・関節・心弁膜,ヘパラン硫酸は中枢神経,ケラタン硫酸は骨症状と関連する傾向がある.現在,MPSは11種類の欠損酵素によってI型からIX型(V型とVIII型は欠番)まで7つの病型に分類されている(表1).各病型では蓄積するムコ多糖(表2)や障害される組織・臓器が違うため,臨床像は異なっている.また,同一病型の患者間でも残存酵素活性の違いによって,臨床症状,症状の出現時期,病状の進行速度などの重症度には差が生じる 1).II型のみがX連鎖潜性(劣性)遺伝形式である.わが国の発症頻度は,出生10万人に1人とされ,患者数は300人前後であると考えられる.1.各病型の臨床所見a.I型(Hurler症候群) ヘパラン硫酸とデルマタン硫酸の代謝に関与する酵素欠損が病因である.低身長,特異顔貌(鞍鼻,分厚い口唇,巨舌および舌挺出,幅広く分厚い鼻翼,濃い眉毛等),関節拘縮,肝脾腫,心弁膜症(特に僧帽弁,大動脈弁の肥厚・狭窄),309900252900252920252930252940253000253010253200253220601492OMIN607014〜6IDUAIDSSGSHNAGLUHGSNATGNSGALNSGLB1ARSBGUSBHYAL14p16.3α-L-イズロニダーゼXq2817q25.317q21.2α-N-アセチルグルコサミニダーゼ8p11.2112q14.316q24.33p22.35q14.1N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ7q11.213p21.31表1ムコ多糖症(MPS)の分類分類名I型II型IIIA型IIIB型疾患名遺伝子名遺伝子座欠損酵素232Hurler症候群Hunter症候群Sanfilippo症候群A型Sanfilippo症候群B型IIIC型Sanfilippo症候群C型IIID型IVA型IVB型Sanfilippo症候群D型Morquio症候群A型Morquio症候群B型VI型Maroteaux–Lamy症候群VII型IX型Sly病Natowicz症候群イズロン酸-2-スルファターゼヘパラン N-スルファターゼアセチルCoA:α-グルコサミニド N-アセチルβガラクトシダーゼ(アリルスルファターゼB)トランスフェラーゼ病態と概念Expert OverviewI

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