2588先天代謝異常症クリニカルファイル
16/24

第I部症例編——M ムコ多糖症 ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑(Sanfilippo症候群)(Sly病)精神運動発達遅滞,蒙古斑,鼠径・臍ヘルニア,骨変形,反復性中耳炎,難聴,扁桃肥大,角膜混濁などを認める.重症型は1~2歳頃に言葉の遅れなど精神運動発達遅滞が明らかになり,2歳から4歳頃に発達のピークに達して,その後は退行や臓器障害が進行し,10歳前後に死亡する.一方,軽症型では,知的障害を伴わず,緩徐に進行する関節拘縮,骨変形,心弁膜症のみを呈し,学童期や成人期まで診断されないこともある.b.II型(Hunter症候群) 低身長,特異顔貌,関節拘縮,肝脾腫,心弁膜症,精神運動発達遅滞,蒙古斑,鼠径・臍ヘルニア,骨変形,反復性中耳炎,難聴,扁桃肥大などが共通してみられる.II型では角膜混濁を認めない.また,遺伝形式からII型患者は基本的に男性である.II型も軽症型から重症型と臨床像は幅広く,予後も様々である.c.IIIA~D型(Sanfilippo症候群A~D型) ヘパラン硫酸の代謝に関与する酵素欠損が病因である.他の病型に比較すると身体上の所見は軽微で目立たず,進行性で重度の精神発達遅滞が特徴である.一般に3歳以降より精神発達遅滞,神経退行が明らかとなる.その後,多動,睡眠障害,けいれん発作などの神経症状を呈し,10~20代で寝たきり・呼吸不全で死亡する.d.IVA型,IVB型(Morquio症候群A,B型) ケラタン硫酸の蓄積により,低身長,角膜混濁,心弁膜症と重度の骨変形[鳩胸,外反膝(X脚),側弯,後弯等]を呈する.精神発達遅滞は認めない.IVB型の責任酵素であるβガラクトシダーゼ(β-galactosidase: GLB)は,GM1ガングリオドーシス(GM1 gangliosidosis)と同じ酵素である.2つの疾患の臨床症状は全く異なるが,中間型の症状を呈する例も報告されている.椎骨変形による脊髄圧迫や頸椎脱臼が生命予後を左右する.e.VI型(Maroteaux-Lamy症候群) 身体所見上はI型に類似し,特異顔貌,骨変形,関節拘縮,角膜混濁,肝脾腫,心弁膜症などを認めるが,精神発達遅滞を認めない.f.VII型(Sly病) デルマタン硫酸,ヘパラン硫酸,コンドロイチン硫酸の代謝に関与するβグルクロニダーゼ(β-glucuronidase: GUSB)の欠損により,いずれのムコ多糖も蓄積する.I型の重症型に類似した臨床所見を示し,乳児期からの特異顔貌,肝脾腫,骨変形,精神発達遅滞などを呈する.最重症例は胎児水腫で死亡し,軽症例では予後良好のこともあり,重症度のバリエーションが大きい.g.IX型 きわめて稀.確立した臨床所見は不明である.Expert Overview分類名デルマタン硫酸へパラン硫酸コンドロイチン硫酸ケラタン硫酸233表2ムコ多糖症(MPS)の各病型で蓄積するムコ多糖(Hurler症候群)(Hunter症候群)(Morquio症候群)(Maroteaux–Lamy症候群)II型III型IV型VI型VII型I型

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る