第I部症例編——M ムコ多糖症または不明である.VI型では肝脾腫,角膜混濁,関節拘縮には有効であるが,骨変形に対しては有効ではない.HSCTの適応は,病型,年齢,重症度,ドナーの有無などを考慮し,専門医と相談して適応を決定することが望ましい.また適切なドナーが必要であり,必ずしも適切なタイミングで移植が実施できないこと,生着不全や移植片対宿主病(graft versus host disease: GVHD)といった重篤な副作用のリスクがある.Expert Overview 2353.造血幹細胞移植(HSCT) 造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell trans-plantation: HSCT)は,生着後のドナー細胞からの永続的な酵素供給が期待でき,ERTのような生涯にわたる継続的な酵素製剤の投与を必要とせずに同様の治療効果が得られる.特にI型において,知能指数(intelligence quotient: IQ)70以上かつ年齢2歳未満の患者に行うと最も治療効果が認められる 3).III型とIV型に対するHSCTの効果は,ほとんど認められていないか, ●文献 1) Muenzer J: The mucopolysaccharidoses: A heterogeneous group of disorders with variable pediatric presentations. J Pediatr 2004; 144: S27-34. 2) 日本先天代謝異常学会: ムコ多糖症(MPS)II型診療ガイドライン2019. 診断と治療社, 2019. 3) 日本先天代謝異常学会: ムコ多糖症(MPS)I型診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021.
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