◦頭部MRI検査: 軽度の脳室拡大と脳溝開1K------第I部症例編——M ムコ多糖症診断名2.鑑別診断 MPS I,VI型,ムコリピドーシス(mucolipidosis: ML),先天性角膜混濁(Peters異常,TORCH症候群).〔解説〕 頭囲拡大を伴う「粗な顔貌」と称される特異顔貌,広範な蒙古斑,鼠径・臍ヘルニア,肝脾腫はMPSの早期から認められる症状である.本症例では,鼠径・臍ヘルニア,肝脾腫は明らかではないが,特異顔貌と広範な蒙古斑を認めたため,角膜混濁を伴うMPS I,VI型,MLが鑑別診断にあげられた.また,乳児期から角膜混濁を認めたため,Peters異常,TORCH症候群などによる先天性角膜混濁が鑑別としてあげられたが,胎児期や新生児期の発育や合併症の指摘がないことから否定的と考えられた.3.追加検査◦全身骨X線検査: 肋骨のオール状変形(図2a),腰椎体下部の舌状の突出(図2b),上腕長管骨の横径の増大(図2c)など“dysos-tosis multiplex”と呼ばれるMPSに特徴的な骨変形所見を認めた.大,血管周囲腔の開大は認めない.◦尿中ムコ多糖分析: ウロン酸定量値は540 mg/g creatinine(0歳基準値:43.4±12.9 mg/g creatinine),分画比 はデルマタン硫酸 47 %,② IDUA遺伝子検査では,両親がそれぞれのバリアントのヘテロ接合体(保因者)であることを確認しており,患児は両バリアントの複合ヘテロ接合体であり,遺伝学的にもMPS I型であると確定診断した.また,2つのバリアントのうちc.590-1G
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