V本症例のまとめ肋骨のオール状変形(a),腰椎体下部の舌状の突出(b),上腕長管骨の横径の増大(c)が認められる.〔解説〕 日本先天代謝異常学会による『ムコ多糖症(MPS)I型診療ガイドライン2020』 1)では,月齢24か月未満で発達指数(developmental ●文献 1) 日本先天代謝異常学会: ムコ多糖症(MPS)I型診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2020. 生後10か月時よりラロニダーゼ (遺伝子組換え)(アウドラザイム®)による酵素補充療法(enzyme replacement therapy: ERT)を開始した.重症型MPS I型であることから,同時に造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplanta-tion: HSCT)の準備も開始した.ERT開始2か月後の1歳1か月時にHLA7/8アレル一致の非血縁者をドナーとするHSCTを受けた.quotient: DQ)70以上の重症型MPS I型に対するHSCTは生命予後および中枢神経症状の改善がみられるとし,HSCTによる治療が強く推奨されている. HSCT施行後20日時点で好中球数の回復がみられ,貧血や血小板減少も改善しており,ドナーの造血幹細胞の生着は順調であると考えられた. 眼科医による角膜混濁の指摘が診断の手がかりとなった. 主治医である小児科医は以前にMPS II型患者の診療経験があったため,乳児期の角膜混濁という稀な所見と,頭囲拡大,特異顔貌,広範な蒙古班などの所見を結び付け,MPSを鑑別にあげることで早期診断につながった.aac.686delC/p.P229RfsX4は未報告のバリアントであるが,フレームシフト変異による早期終止コドン(premature termination codon)の出現が認められている.したがって,これら2つのバリアントの複合ヘテロ接合体では臨床型は重症型であると考えられた.bbcc238図2全身骨X線所見ムコ多糖症治療開始までの経過III治療開始後の経過と予後IV確定診断から
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