1睡眠・覚醒リズムの発達(サーカディアンリズムの発達)ヒト,すなわちホモサピエンスは,太陽の周りを自転しながら公転する地球上の昼行性の哺乳類です.胎内環境から地球上に生まれたヒトは,生後すぐウルトラディアンリズム(生体が示す短いリズムのこと.約90分といわれている)を呈しますが,太陽の光を浴びて昼行性の哺乳類として成長をします.生後2か月頃に一時無秩序のようになりますが,決して夜行性の動物でありません.徐々に昼は起き,夜に長く眠れるようになり,生後4か月頃おおよその昼夜の区別がつくようになります1).図1に生後4か月頃までの夜と昼の睡眠時間の推移を示します2).生後6か月以降から1歳までの睡眠の変化は,朝と夜が決まり,徐々にその振幅がはっきりします(図2)3).すなわち,昼寝が減り,夜間の授乳も減ります.1歳半頃には,昼寝は午後1回となり,夜間の覚醒がほぼなくなり,5〜6歳までに昼寝をしなくなり,成人と同じリズムになります.言い換えますと,生後3〜4か月までには,睡眠・覚醒リズムの大枠が完成し,その後,中身である中途覚醒と昼寝が減るというように発達します.発達障害のある子どもの睡眠を理解するために11多相性であった新生児期の睡眠・覚醒リズムが1歳頃までに昼行性の二相性に変化することは,中枢神経系の発達において重要なことです.年齢に従い,睡眠時間は徐々に短くなります.高齢者は昼間のうたた寝が増え,夜の睡眠は浅くなりレム睡眠が減少します.このようにヒトの睡眠は一生で変化しますが,二相性の時代が長いので,睡眠が変化することに気がつきません.小児科医は睡眠の発達をよく知る必要があります(図3).3 子どもに必要な睡眠と発達過程における睡眠の生理的変化ココがポイント!!地球は約24時間で太陽の周りを自転しながら公転し,ホモサピエンスは昼行性の地球上の哺乳類である.ヒトは生後3〜4か月頃までに昼間覚醒することを覚え,1歳頃までに劇的に変化する.乳児期以降から幼児期までの昼寝の変化にも留意する.学童以降は「早寝早起き朝ごはん」を心がける.睡眠・覚醒リズムの発達は脳幹機能,心身の成長,自律神経の発達に影響する.昼に充実した楽しい活動をするために,夜は十分な睡眠が必要である.II子どもに必要な睡眠と発達過程における睡眠の生理的変化3
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