2617日常生活から学ぶ 子どもの発達障害と睡眠
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121はじめにわが国の子どもは諸外国に比べ睡眠の問題を抱えている頻度が高く,特に発達障害(神経発達症)のある子どもではさらに睡眠障害の有病率が高いとされています.筆者らは,久留米大学小児科神経外来で多数の発達障害のある子どもたちを診療しています.問診で必ず睡眠に関する質問をしますが,入眠に30分以上かかる子や中途覚醒,早朝覚醒する子がとても多いことに驚きます.保護者はそのことを病的な問題として捉えていないことも多いです.睡眠障害は,発達障害児の不注意,多動,興奮といった症状を増強する可能性が指摘されています.逆に発達障害で入眠障害がある子どもたちにメラトニン(メラトベル®)治療を行うと,入眠潜時(入床から入眠するまでの時間)が短くなるだけでなく,常同行動,興奮性や多動など行動面の改善が認められたと筆者らは報告しました1).乳児期にひどい夜泣きや入眠障害を訴える子どもをフォローしていくと自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)の特性が顕著になっている例も経験します.子どもの睡眠には家庭など周囲の環境が大きな影響を及ぼすと考えられており,昨今のスマートフォンやオンラインゲームの普及は大きな社会問題になっています.発達障害のある子どもたちは内因性に概日リズム睡眠障害を起こしやすい素因をもっており,それにスマートフォンやオンラインゲームの要因が絡まると昼夜逆転,不登校など大きな問題に発展しやすいと考えます.I 発達障害のある子どもの睡眠を理解するためにココがポイント!!わが国の子どもは諸外国に比べ,睡眠の問題を抱えていることが多い.特に発達障害(神経発達症)のある子どもは睡眠障害の有病率が高いといわれている.子どもの睡眠習慣質問票日本語版(CSHQ-J)は睡眠障害のスクリーニングに有用であり,小児診療の場で広く使用されることが期待される.メラトニン(メラトベル®)という新しい治療選択肢も登場した.ただ,子どもの睡眠と発達に関しては未知なことも多く,今後もエビデンスの蓄積が求められる.オーバービュー

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