第1部Introduction翻訳についての基本的な考えかた1▲“Good morning.”を訳せますか?“Good morning.”を正しく訳せる人なら翻訳はできる,というのが著者の持論です.これについてまずご説明します.“Good morning.”を翻訳してくださいといわれれば,本書を手にされる方なら,おそらく10人中10人が,「おはよう(ございます)」と訳すでしょう.もちろん,正解です.でも,この英文をそのように訳すのはなぜか,考えてみたことがありますか?よく考えてみると,good(=よい)とmorning(=朝)という2つの英単語をつなげたこの英文をどう眺めても,「おはよう」という4文字の日本語にはたどり着きません.つまり,“Good morning.”という言葉に「おはよう」という意味があるからそう訳すのではないのです.ではなぜか.それは,英語話者が“Good morning.”という場面で,日本語話者は「おはよう」というからです.英文和訳とは,英文の内容を日本語で説明することである.翻訳とは,このように「英語が話されているその状況で,日本語話者なら何というか」,または,「英語で説明されているその内容を,日本語で説明するとどうなるか」を伝えることであり,決して「英語を日本語に直すこと」ではないと著者は考えています.これは,通訳をイメージしていただくとわかりやすいのではないでしょうか.通訳者は決して,外国の方が話している言葉を逐語的に訳したりはしません.「この方が話されているのはこんな内容です」と伝えるのが通訳者の仕事です.翻訳も,それと同じだと思います.こう考えれば,英単語一つひとつを日本語に置き換えていくのではなく,英語の1文や1段落に書いてあることを日本語で説明する,というイメージを理002第1部英語➡日本語基本ルール
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