1 臍帯の肉眼所見34Ⅲ章 単胎胎盤のみかた・調べかた 臍帯（umbilical cord）は胚子と栄養膜を連結していた付着茎に由来する．生理的臍帯ヘルニア（physiological umbilical herniation）をなした後，胎生3か月の末頃に臍帯内体腔は消失する（図1）．尿膜，卵黄腸管，卵黄血管が閉塞したのち臍帯内にはワルトンゼリー（jelly of Whar-ton：ワルトン膠質ともいう）で囲まれた臍帯血管のみが残る．ワルトンゼリーはムコ多糖蛋白に富み，血管の保護層として機能する． 臍帯は肉眼的にはやや白色調で透明感を有しているが，ホルマリン固定後は透明感が失われて不透明となる．正常の臍帯には2本の動脈（A：artery）とこれより径の大きい1本の静脈（V：vein）がワルトンゼリーに囲まれている（AVA）．動脈壁は筋性で，弾性線維を多く含む．臍帯動脈は胎児の低酸素血を入れ，臍帯静脈は胎盤でのガス交換と物質交換を終えた酸素化血を入れて胎児に戻る． 1 臍帯の有無 提出された検体に臍帯が含まれていないことがある．あとになってあったのかなかったのかがわからなくなると困るので，有無は必ず記載する． 2 臍帯付着部 臍帯の胎盤への付着部位（cord insertion）には，中央付着（central insertion），側方付着（eccentric insertion），辺縁付着（marginal insertion：臍帯付着部が胎盤辺縁から2 cm未満のもの）および卵膜付着（velamentous insertion：臍帯が胎盤に直接付着していないもの）がある（図2）． 臍帯付着部は中央付着または側方付着がほとんどで，辺縁付着は5～10％，卵膜付着は1～2％程度とされる．辺縁付着や卵膜付着は胎児発育不全と関連することがある．卵膜付着臍帯ではほとんどの症例で胎児血管は卵膜に付着したのち，その保護層であるワルトンゼリーを失い構造的に脆弱になる（velamentous vessel）．胎児血管はその状態で卵膜内を走行するため，分娩時に卵膜とともに血管を損傷すると，出血のため，胎児死亡の原因となることがある．臍 帯2
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