2632小児・成育循環器学 改訂第2版
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第Ⅱ章acbdB臨床循環病態生理と治療図2  肺小動脈の病理変化表2 WHO機能分類Ⅰ度:身体活動に制限のない肺高血圧症患者   普通の身体活動では呼吸困難や疲労,胸痛や失神な評価が困難なため,小児用に修正されたものも提唱されている7). ●診断❶診断手順 早期診断の重要な第一歩は,臨床症状,病歴と後述する身体所見からPHを疑うことである.次に胸部X線,心電図や心エコーで右室圧負荷所見を確認し,PHの存在を疑えば同時に第2群の鑑別も行う.そして第3群,第4群の鑑別に後述する画像検査を行いながら,PHの確定診断には心臓カテーテルが必須検査である.中等症~重症のPHであれば専門施設に紹介し,心臓カテーテル検査を施行し鑑別診断を行う.後述する血行動態指標からど生じない.Ⅱ度:身体活動に軽度の制限のある肺高血圧症患者   安静時には自覚症状がない.普通の身体活動で呼吸困難や疲労,胸痛や失神などが起こる.Ⅲ度:身体活動に著しい制限のある肺高血圧症患者   安静時に自覚症状がない.普通以下の軽度の身体活動で呼吸困難や疲労,胸痛や失神などが起こる.Ⅳ度:どんな身体活動もすべて苦痛となる肺高血圧症患者   これらの患者は右心不全の症状を表している.安静時にも呼吸困難および/または疲労がみられる.どんな身体活動でも自覚症状の増悪がある.65だけでなく,肺や肺血管の成熟を阻害する遺伝子が21番染色体上にあることから,肺疾患に伴うPHも問題になることがわかっている.またBPDの患者ではPHのスクリーニングが推奨された.そしてPHの存在が判明した場合には,肺疾患の治療がPAH治療の開始よりも先行すべきとされた.膠原病や第4群の慢性血栓塞栓に伴うものは,成人と異なりまれである.また小児PHの原因には程度の差こそあれ,周産期の適応不全,発達障害や肺の低形成が関係し,遺伝子,染色体異常や多発奇形症候群の存在が大きく関係する7).病態の発症機序や分類6)などは成人と類似点も多く,診断基準は成人と類似している. ●臨床症状 初発症状として運動時の息切れが最も多いが非特異的症状であり,患者が訴えることは少ない.登下校時の歩行が遅れ,体育の授業や運動会で走るのが遅くなっていても,気付かれるのは1~2年経過してからが多い.胸痛や失神が出現してはじめて診断に至ることが多く,学校心臓検診で発見される割合も20~30%程度を占めている15).他に易疲労感や動悸などが比較的多い. 臨床症状に基づく重症度分類として,WHO肺高血圧症機能分類とニューヨーク心臓協会(NYHA)機能分類の両者が用いられているが,疾患特異的な前者を表2として示す.一般的に6歳未満の小児ではPHの重症度を示す指標.経時的変化として,中膜平滑筋による肥厚a→細胞性内膜による肥厚b→線維性内膜による肥厚c→葱状病変d.

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