第Ⅱ章QPREmm5臨床検査SJV6V5V4V3V2V1V6RV5RV4RV3RV2RV1R0.20秒PR間隔PR間隔QRS×○×○QT間隔TTUUP時間127図4 胸部誘導電極位置V3はV2とV4の中点.V5とV6はV4の高さ.他にV7:左後腋窩線,V8:左後肩甲骨線,V9:脊椎左線,E:食道誘導などがある.(大国真彦:小児心電図のよみかた.診断と治療社,1980;38—67)不全患者ではQRS幅が広いほど要注意との報告がある.❹Q波 Q波は心室中隔の脱分極をあらわす.深さ0.2~0.3 mVで通常Ⅱ・Ⅲ・aVF・V5・V6に認められる.深さ0.5 mV以上や幅0.04秒以上は異常Qである5).通常QS型を除くと,V1にQ波は存在しない.ゆえにV1のqR(s)は学校心臓検診では異常となる.V1Qがあれば中隔の興奮の向きの逆転等を考え,修正大血管転位,B型(右室に副伝導路)WPW,強度一側心室肥大,心臓位置異常,右室前壁梗塞等を留意する.QS型波形(異常Q)はその誘導部位から心筋梗塞部位診断に有用である.❺R波 新生児期はやや低電位を呈する.生後3か月頃に,右室優勢から成人の左室優勢におおむね変化する.左側胸部誘導のR波高は3か月頃に成人値に達し,小学校高学年や中学生では成人値を上回る.思春期には性差が生じ,全ての誘導でR波高は男子が女子を上回る.V1,V2のRsr’,rSr’型の分裂は健常小児にしばしば認められる.❻ST部分 心筋再分極過程第2相のプラトーに相当する.心筋虚血・壊死・炎症・心室肥大・電解質異常により変化する.ST偏位はP波のはじまり同士を結ぶ線からの偏位を測る.正常範囲は一般に +0.1~-0.05 mVであるが,幼児ではそれ以上の上昇や下降がある3).頻脈ではJ点(QRS波終末)の高図5 基本的心電図波形と計測方法電位は基線の上縁から上方に,下縁から下方に計測する.さに合わせて上昇・下降する傾向がある.J点が低下し右肩あがりにT波に移行する接合部型は病的意義に乏しいが,水平型や下降型は虚血性変化を考える.ST‒Tの肥大性変化(ストレインパターン)はST低下に陰性T波が連続する.右室圧が上昇すると右側胸部誘導で陽性T波となり,顕著な場合は陰性T波のストレインパターンとなる.顕著な左室肥大では左側胸部誘導でストレインパターンとなる.❼T波 心室筋が再分極する過程を示す.生直後はV1~V6で陽性だが,左側胸部誘導は生後数時間で陰性または2相性となる.生後1~2日以内に右室圧低下に伴い右側胸部誘導は陰性化し,V4→V1へと順に陽性化し高校生では全胸部誘導で陽性化する.❽QT間隔 「Ⅲ‒D‒4:QT延長症候群」(p.563)を参照されたい6).❾U波 T波につづく小さな波で,aVR以外は陽性でであり,T波より低く高さ2 mm以内が正常である.高い場合は低K,QT延長症候群(LQT7),ジギタリス中毒を考える.陰性U波は心筋虚血,心肥大を考える.❿心室肥大判定基準(表1)7) 1986年日本小児循環器学会小児心電図専門医委員会の基準を示した. ●心疾患固有の心電図波形❶心房中隔欠損 典型例では右軸偏位やV1でrsR’型・qR型不完全右脚ブロック(IRBBB)を認める.V4に孤立性陰性Tを認めることがあり利用価値が高い.❷房室中隔欠損 房室結節を含む刺激伝導系が後下方に偏位していることにより左軸偏位を呈する.左軸偏位とPR延長が特徴的である.右室容量負荷が鎖骨中央線前腋窩線中腋窩線
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