2632小児・成育循環器学 改訂第2版
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aabcbcabcAAAAAAVVVRVAa:刺激の最後の1拍.b:刺激中止後の1拍目.c:刺激中止後の2拍目.ECG:心電図,HRA:高位右房,RVA:右室心尖部,A:心房電位,V:心室電位,PCL:pacing cycle length,TCL:tachycardia cycle length,PPI:post pacing interval図3  オーバードライプペーシングため,刺激から局所電位までの時間(post pacing interval:PPI)は,頻拍周期(tachycardia cycle length:TCL)より長くなる(図3a,図3b).この時,刺激中のQRSはfusion波形であるが,刺激中止後は1拍目から幅の狭いQRS波形となり(図3b),その後は頻拍周期で頻拍が続く(図3c). VOPを頻拍回路上から行うと,刺激中のQRS波形は頻拍中と近似した波形となる.完全に波形が一致した場合にはconcealed entrainmentと呼ぶ.房室結節リエントリー頻拍(atrioventricular nodal reentrant tachycardia:AVNRT)では心室は頻拍回路に含まれないためfusion波形はみられない.刺激部位が頻拍回路に近いほどPPIはTCLに近くなる.PPI-TCL<115ミリ秒はORTの可能性が高く,>115ミリ秒はAVNRTの可能性が高い. また,刺激中止後,ORT,AVNRTでは頻拍はven-複伝導路房室結節ECGECGHRAPCLPCLTCLVVTCLVPPI>TCL192ORT)を例にあげる.頻拍はAPを逆行性に,AVNを順行性に旋回するため,QRS波形は幅が狭く,QRSの直後に逆行性のP波が認められる(図2a).頻拍中に右室心尖部から頻拍周期より少し短い周期でVEPを加えると,刺激は右室心尖部の一部を捕捉し,順行した興奮波と衝突(collision)するため,頻拍中のQRSとの癒合(fusion)波形を呈する(図2b).刺激間隔が一定の間は刺激後のQRS波形は一定になる(constant fusion).刺激による興奮波は頻拍回路を上行して心房を捕捉する.刺激間隔を短縮すると,心室での捕捉範囲が広がるため,QRS波形は右室心尖部刺激時の波形に近づく(progressive fusion)(図2c,図3a). 刺激を中止すると,次に記録される局所電位は,最後の刺激が頻拍回路に入り込む時間①と,頻拍回路から右室心尖部に伝導するまでの時間②長くなる図2 エントレインメントa:左副伝導路を介する房室回帰頻拍.b:頻拍周期に近い刺激周期での右室心尖部からのオーバードライブペーシング.c:さらに速い刺激周期でのオーバードライブペーシングECG:心電図中止後の頻拍の再開

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