2632小児・成育循環器学 改訂第2版
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第Ⅲ章abA左右胎児特有の問題①②③④St脊柱=0時dAoIVC右=9時左=3時腹側=6時①②③LARALVRV321図2 上腹部水平断面St:胃泡,dAo:下行大動脈,IVC:下大静脈.ヒト胎児における障害の報告はない.しかし,ドプラ法やハーモニックイメージングなどの出力の高いモダリティや長時間の検査の,胎児への潜在的リスクは完全には否定できないため,可能な限り低侵襲な検査となるよう,対象と方法における配慮が必要である. ●限界 胎児の週数(16週以前や35週以降),胎位(腹臥位),羊水過多・過少,母体肥満などの状況下では,エコー画像の解像度が著しく低下し,診断に必要な情報が得られにくいことがある.また,診断の困難さは疾患により異なる.四腔断面で明らかな異常を呈する単心室疾患は比較的診断が容易である一方,細かい所見の検出が必要な総肺静脈還流異常や大動脈縮窄などは特に診断が困難である.胎児心エコーにはこのような限界が存在することを,検査前に家族へ十分説明する必要がある. ●胎児心エコー基本断面(図1)❶胎児の左右決定 まず,胎児の頭部が画面の右,臀部が左になるように胎児の全体像を得る.ここからプローブを90°反時計回転させると,胎児の水平断面が得られる.このとき,時計盤をイメージし,図3 4CV:four chamber view(四腔断面)St:胃泡,dAo:下行大動脈,IVC:下大静脈.脊柱を0時,腹側を6時とすると,3時方向が左,9時方向が右となる(図2).こうすることで,心臓や腹部臓器の左右の異常を正確に診断できる.❷上腹部水平断面 胃泡が左側にあることを確認する.胃泡が右側にある場合は全内臓逆位や錯位を疑い,胃泡が確認できない場合,食道閉鎖などを鑑別する必要がある.大動脈が脊柱の左側,下大静脈が脊柱の右側にあることを確認する(図2).総肺静脈還流異常症(3型)の垂直静脈がこの断面における異常血管として認めることがある.❸four chamber view(4CV)(図3) 上腹部水平断面からプローブを頭側に平行移動させると,four chamber view(4CV)が得られる.胎児の心臓は出生後と較べると横に寝ている形のため,水平断面で正確な4CVを得られる.正しい水平断面であることを保証するためには,1本の肋骨が長い距離にわたって描出されていることを確認する.ズームをかけて胎児心臓を拡大し,以下の項目を確認する.ⅰ)心臓が左側にあるか確認する:心臓が右側にある場合,全内臓逆位,錯位,または横隔膜ヘルニアや胸郭内占拠病変による縦隔の偏位の可能性がある.ⅱ)心軸(心房中隔,心室中隔のライン)が左を向いb: ①4CVからプローブを傾けていくと,②左室流出路,③右室流出路が順に観察される.4CV:four chamber view(四腔断面),3VV:three vessel view,3VTV:three vessel trachea view.図1 胎児心エコー基本断面a: 胎児水平断面の観察.①上腹部断面→②4CV→③3VV→④3VTV.

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