第Ⅲ章先天性心疾患SVCSVCECECIVCIVC461 ●年齢・性別 胎児診断症例,女児. ●主訴 チアノーゼ.多呼吸. ●現病歴・家族歴 在胎28週の胎児心エコーにて三尖弁閉鎖が疑われて当院紹介.在胎37週,2,714 gで当院にて出生.出生直後よりチアノーゼあり.心エコーにて三尖弁閉鎖(Ⅰc型)と診断.日齢3より多呼吸が出現し,日齢5より頻脈.胸部X線にて心拡大と肺うっ血が進行.家族歴に特記事項なし. ●入院時診察所見 身長48.5 cm,体重2.7 kg,血圧60/40 mmHg,心拍数130/分,SpO2 86%,胸骨左縁第三肋間にLevine 3/6の収縮期雑音を聴取. ●検査結果 心電図:洞調律,左軸偏位,左室肥大. 胸部X線:心胸郭比51%,肺うっ血像あり. 心エコー:三尖弁閉鎖,肺動脈狭窄なし,心房間交通狭小化なし,左室拡張末期径(LVDd)19.1 mm,左室駆出率(LVEF)53%,動脈管閉鎖. ●治療経過 日齢11に肺動脈絞扼術を施行.外来にて経過観察中に心房間交通が狭小化したため,生後5か月時にBAS施行.生後11か月時の心臓カテーテルでは平均右房圧6 mmHg,平均左房圧5 mmHg,平均肺動脈圧11 mmHg,PA index 448,動脈血酸素飽和度(SaO2)80%.1歳0か月,体重6.5 kgで両方向性Glenn手術+心房間交通拡大術施行.肺動脈の追加絞扼を行い,順行性肺血流を残した.2歳8か月時に心臓カテーテル施行(図5).平均肺動脈圧11 mmHg,肺血管抵抗1.05 Wood unit・m2,PA index 172,LVEF 62%,僧帽弁逆流はごく軽度でFontan手術可能と判断された.絞扼テープに起因する中心肺動脈狭窄あり.Fontan手術時に形成の方針とした.2歳9か月時,体重11.6 kgで中心肺動脈形成および径18 mmの人工血管を用いて心外導管型Fontan手術を施行.術後半年の心臓カテーテルで中心静脈圧,平均肺動脈圧ともに11 mmHg,PA index 314,術であった症例,両方向性Glenn手術であった症例はいずれも93%と良好であった5).Alsoufiらは全体の8年生存率84%,多変量解析による危険因子は遺伝子異常もしくは心外奇形,および肺動脈閉鎖であったと報告している6).図4 心外導管型Fontan手術後の3D■CT画像SVC:上大静脈,IVC:下大静脈,EC:心外導管.はバルーン心房中隔切開(BAS)が行われるが,BASで十分に交通孔が拡大されない場合は外科的に心房間交通拡大(作成)術が行われる.「よりよいFontan循環を目指して」十分なサイズと左右均等な肺血管床を有する肺動脈の発育を促すことが肝要である. 両方向性Glenn手術は生後3か月を過ぎれば可能といわれるが,本症の主心室は左室型であり,房室弁は僧帽弁形態であることから,必ずしも乳児早期からlow flow strategyを適応する必要はない.むしろしっかりと肺動脈を成長させるために生後6か月~1歳前後で両方向性Glenn手術が行われることが多い.両方向性Glenn手術の際に順行性肺血流を残すか否かという点も議論のわかれるところではある.長期的な視点から順行性肺血流を残して肺動脈の成長を促した方がよいのか,順行性肺血流を残さずに心室の容量負荷を軽減させた方がよいのか,現時点では不明である5).TGA型の症例ではVSDが小さい場合や,右室が非常に小さい場合は大動脈弁下狭窄の発生が危惧されるため,Damus‒Kaye‒Stansel吻合を追加しておく. 近年は心外導管型Fontan手術が主流(図4)であり,その適応年齢は1~2歳となっている.本症の場合,解剖学的に複雑な症例は少なく,身体の発育を待ったうえでFontan手術を行い,できれば18 mm以上の人工血管を使用することが望ましい. 三尖弁閉鎖の治療成績は比較的良好である5~7).Congenital Heart Surgeon’s Society 34施設の解析ではⅠ型の三尖弁閉鎖症例で6年生存率88%.初回手術が体肺動脈シャント手術であった症例の6年生存率が85%であったのに対して,初回手術が肺動脈絞扼症例呈示C
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