2632小児・成育循環器学 改訂第2版
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第Ⅲ章不整脈6:1752‒1761585❷小児循環器領域でのCRTの特徴 小児循環器領域のCRT対象患者を過去の大きな3つの試験でみてみると,3つの疾患群にわかれる.心筋症(9~17%),先天性完全房室ブロック(6~14%),CHD(71~80%)である11~13).小児循環器領域では,CRTのnon‒responderの独立した危険因子はDCMであったと報告12)されたが,これは小児のDCMでは,LBBBを伴う典型的な左室同期不全を呈する例が少ない14)ことが原因と推測される.心筋症,先天性完全房室ブロック例は左室体心室疾患であり,経静脈心内膜アプローチであれ,経胸壁心外膜アプローチであれ,一般成人と同様に右室心尖とその対側・左室後側壁への留置が望ましい.❸CHDに対するCRT CHD患者のCRTの適応は,二心室体心室左室,二心室体心室右室,単心室血行動態と大きく3つにわけて議論される6,15).二心室体心室左室においては成人領域での適応がそのまま用いられる.二心室体心室右室や,単心室血行動態においても体心室駆出率の低下と体心室脚ブロックを伴うQRS幅の増大がその適応としてあげられるが,class Ⅱa/Ⅱbであり,class Ⅰの適応はない.私見ではあるが,体心室形態がどうであろうと,心室同期不全が存在し,それが原因の心臓機能障害を認めるなら,CRTを積極的に導入すべきであると考える. CRTの適応となるCHDの心室形態は,成人領域 10) Mori H, et al.:Int J Cardiol 2023;371:204‒210 11) Dubin AM, et al.:J Am Coll Cardiol 2005;46:2277‒2283 12) Janousek J, et al.:Heart 2009;95:1165‒1171 13) Cecchin F, et al.:J Cardiovasc Electrophysiol 2009;20:58‒65 14) Chen CA, et al.:Am J Cardiol 2009;103:103‒109 15) Khairy P, et al.:Heart Rhythm 2014;11:E102‒165 16) Miyazaki A, et al.:Europace 2016;18:100‒112 17) Miyazaki A, et al.:Heart Vessels 2017;32:234‒239とは異なる特殊な心室同期不全を呈する(単心室血行動態と右室体心室).単心室血行動態を呈する心室形態では,主となる体心室の他に痕跡的な心室を有し,大きな心室中隔欠損(VSD)が2つの心室間に存在することが多い.この2つの心室間に収縮のずれが生じると,VSDを血流がswingingして,なかなか前方に拍出されない「biventricular swinging motion」が生じる16).これは単心室血行動態にみられる特殊な心室同期不全であり,この改善には両心室が同時に収縮できるリード位置を選択する. 右室体心室は,単心室血行動態,二心室血行動態どちらの場合も存在するが,右室長軸方向同期不全16)を認める場合がある.右室長軸方向同期不全は,右室心尖から極端に遅れて右室流出路が収縮する右室内同期不全である.この場合は右室を長軸方向にはさむような位置にリードを留置する.さらに二心室血行動態を呈する右室体心室では,心室間同期不全17)が心室内同期不全より血行動態に大きく影響している場合がある.右室体心室疾患においては,右室長軸方向同期不全,心室間同期不全どちらもカバーできるリード位置は左室心尖と右室流出路であると筆者は考える. CHDのCRTを行う際には,至適リード位置,手術侵襲,解剖を加味して植込み方法を決定する.文献 1) 宮﨑 文:Heart View 2019;23:884‒890 2) Janoušek J, et al.:Circulation 2013;127:613‒623 3) Tsujii N, et al.:Circ J 2016;80:1251‒1258 4) Chubb H, et al.:J Am Coll Cardiol 2022;80:902‒914 5) van Geldorp IE, et al.:Heart Fail Rev 2011;16:305‒314 6) Chung MK, et al.:Heart Rhythm 2023;20:e17‒e91 7) Jastrzeębski M, et al.:Eur Heart J 2022;43:4161‒4173 8) Jarman JW, et al.:Eur Heart J 2012;33:1351‒1359 9) von Alvensleben JC, et al.:JACC Clin Electrophysiol 2020;(宮﨑 文)図3 S■ICDの植込み位置S—ICD:完全皮下植込み型除細動器.(Jarman JW, et al.:Eur Heart J 2012;33:1351—1359より改変)D

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