2632小児・成育循環器学 改訂第2版
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もEFEに特徴的な心電図はなく,病態や合併する心疾患によって異なる.❸心エコー 典型例では左室心内膜のエコー輝度亢進と肥厚が認められるが,心内膜のエコー輝度亢進所見は感度95%,特異度75%との報告がある6).原発性EFEでDCMの病態を示す場合には,左室拡張末期径の拡大,左室駆出率の低下を認め,僧帽弁閉鎖不全が認められる場合がある.❹心臓MRI 造影剤使用による心筋perfusion sequenceで肥厚した心内膜は造影効果が乏しく,その後遅れて心内膜が造影される,いわゆる遅延造影(late gadolinium enhancement:LGE)から肥厚した心内膜の範囲・程度が把握できる可能性がある.乳児早期では検査に時間を要するため鎮静が必要であること,速い心拍数では空間分解能,時間分解能が劣ることが問題となる.❺心臓カテーテル検査・血管造影 DCMの病態を示す場合には,左室拡張末期圧(LVEDP)の上昇,肺動脈楔入圧の上昇,肺動脈圧の上昇がみられてくる.造影では左室腔の著明な拡大と左室駆出率の著明な低下を認める.❻心筋生検 確定診断は心内膜心筋生検による組織診断による.正常の心内膜の厚みは10μm,5層程度であるが,EFEでは膠原線維と弾性線維の増生により20μmより厚くなる.ただし新生児乳児では技術的に困難でリスクも高く,また採取標本が心室全体の状態を表しているのかどうかの問題がある. ●主な治療・予後 DCMの病態を示す症例では,DCMの治療に準じた治療を行う.利尿薬,強心薬,血管拡張薬が主体となるが,抗不整脈薬投与や完全房室ブロックに対してペースメーカー治療など不整脈への治療,血栓塞栓症に対しては抗血栓療法が行われる.大動脈弁狭窄や左心低形成症候群など二次性EFEにおいては形態的な修復が優先される.症例呈示626 ●年齢・性別 日齢0,男児. ●主訴 多呼吸,皮膚色不良,筋緊張低下. ●家族歴 次兄;日齢3に心不全症状出現し,左室心筋緻密化障害の診断で生後5か月で死亡. ●妊娠経過 母体は35歳.4経妊2経産(自然流産2).部分前置胎盤あり.切迫早産のため紹介医に母体搬送されるも,子宮収縮増強あり.全身麻酔下に緊急帝王切開となった. ●現病歴 在胎31週5日,出生体重1464 g.Apgar score 4(1分)/5(5分),紹介医で出生.出生時筋緊張弱く啼泣微弱.徐脈,チアノーゼが持続するため気管挿管されNICUに収容.心エコー検査で左室拡大,心収縮能の著明な低下あり.当院に紹介ありNICUに搬送入院となる. ●入院時診察所見 身長:40.5 cm(-0.4 SD),体重:1,464 g(-1.1 SD),頭囲:28.6 cm(-0.2 SD),胸囲:24.2 cm. 体温:36.8度,末梢皮膚温:33.5度,脈拍:144/分,呼吸数:30/分,SpO2:93%. 血圧:45/31 mmHg. 自発呼吸あり,エア入り良好. 心音:Ⅱ音亢進0.00”,Ⅲ音(-),雑音なし. 大腿動脈触知微弱,末梢冷感あり,浮腫なし. 腹部膨満,腸蠕動音微弱,肝臓0.5 cm触知. ●検査結果 動脈血ガス:pH:7.42,PaCO2 31.1 mmHg,PaO2 52.2 mmHg,BE -3.6 mEq/L,Lac 1.4 mmol/L,BS:160 mg/dL. 血液検査:総蛋白3.4 g/dL,アルブミン2.4 g/dL,AST(GOT)89 U/L,ALT(GPT)8 U/L,LD 789 U/L,γ‒GT 48 U/L,クレアチニン0.72 mg/dL,尿素窒素6 mg/dL,Na 133 mmol/L,K 4.8 mmol/L,CL 105 mmol/L,CK 229 U/L,CRP 0.052 mg/dL,Hb 6.9 g/dL,WBC 12.0×103/μL,PLT 9.9×104/μL,Neutro 65.4%. ●画像検査 胸部X線(図1a):CTR 58.0%,肺うっ血軽度. 心電図(図1b):洞調律,心拍数140/分,QRS軸+47度,PR間隔0.10秒,T波平低化あり. 心エコー:図2a.左室は拡大し(左室拡張末期径22.0 mm),びまん性の収縮能低下(駆出率15%)あり.図2b.心内膜面は肉柱が目立ち深い間隙を認め不整. ●臨床診断 左室心筋緻密化障害,うっ血性心不全,極低出生体重児. ●治療・入院経過 NICU入室後,心エコー所見から左室心筋緻密化障害による重症心不全と臨床診断し,人工呼吸管理,利尿薬,強心薬,血管拡張薬の投与を行うも治

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