2632小児・成育循環器学 改訂第2版
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bⅠⅡⅢbbaaaF第Ⅲ章V3心筋・心膜・心内膜病変,心臓腫瘍a:心胸郭比58.0%と心拡大および軽度の肺うっ血を認める.b:T波の平低化を認める.b:左室短軸像;心内膜面は肉柱は比較的粗く,心筋緻密化障害を疑わせる所見がみられる.左室心内膜のエコー輝度は著明ではない.図1  入院時の胸部X線と心電図図2 入院時の心エコー図a:左室M—mode;左室拡張末期径22.0mm(120%)と拡大し,駆出率は15.0%と低下を認める.図3 病理所見(肉眼所見)a:左室壁はびまん性に肥厚し,心内膜面の色調は白色ではないものの肥厚が認められる.b:左室心尖部の肉柱は比較的粗いものの,左室心筋緻密化障害に特徴的な肉柱が分岐しつつ内腔側へ隆起する所見はみられない.大動脈左心室aVRaVLaVFV1V2V4V5V6627療抵抗性で状態の改善はえられず.日齢30頃から尿量減少,浮腫,胸水貯留などみられ,日齢60に死亡した. ●考察 剖検では心重量の増加(30 g)と左室の著明な拡大を認めた(図3).心エコー検査で左室心筋緻密化障害様の所見,剖検での肉眼所見ではDCM様を認めていたが,組織学的にはEFEに特徴的な心内膜膠原線維・弾性線維の増生を認めた(図4,図5).提出した遺伝子検査ではTAZ遺伝子変異(X染色体連鎖性遺伝)を認められた.TAZ遺伝子変異によって発症するBarth症候群は心筋症,好中球減少,ミオパチー,成長障害,3‒メチルグルタコン酸尿症を特徴とする.カルジオリピン欠損とミトコンドリア機能異常をきたし,心筋疾患が最も多く認められる症状で,拡張型心筋症,左室心筋緻密化障害,頻度は少ないがEFEや肥大型心筋症もみられる. ●患者・家族への説明・指示 臨床症状ではDCMの病態,心エコーでは左室心筋緻密化障害を,組織所見ではEFEに特徴的な所見を示していた.遺伝子検査ではTAZ遺伝子という遺伝子に異常(変異)が認められ,それを背景にした遺

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