481.イスラエルのCOVID-19ワクチン集団接種研究果の間に因果関係があるのかどうかを判断する研究です.これらの研究に含まれる論文の選び方や最終的な結果の導き方は,著者の経験則や主観によって行われるものになります.これに対し,システマティックレビューは,再現性のある方法を使用して客観的に検討する論文を選択,批判,吟味します.解析したい論文の要因(介入)やアウトカムなどを厳密に定義し,どのデータベースからどのような検索方法で選択したのか,また最終的な結果をどのような方法で導き出したのかをすべて明示します.メタアナリシスでは,選択した論文のデータを統合して解析し,要因と結果の間の因果関係を統合した効果量(統合オッズ比など)で表します.メタアナリシスでは,交絡を問題とするためにRCT論文が使用されることがほとんどですが,同じRCTでも対象者の選び方が異なった論文が集まれば,選択バイアスが問題となります.また,複数のデータベースからくまなく論文を検索し,客観的に吟味したつもりでも,そもそもネガティブな結果のRCTが報告されない傾向(出版バイアス)があれば,集めてきた論文をいくら解析しても真の結果は得られないため,こうしたバイアスにも注意しながら解析する必要があります. まずは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規ワクチンの有効性に関する『New England Journal of Medicine』(NEJM)の論文をみてみましょう4). Daganらは,イスラエルにおけるファイザー社のCOVID-19に対するmRNAワクチンの集団接種の実社会での効果を検証するため,イスラエル最大の健康保険組合Clalit Health Services(CHS)のデータを解析しました.リアルワールドデータを用いた疫学研究の例 分析疫学としての観察研究に大きく貢献するのがリアルワールドデータです.近年では国や自治体,学会単位,医療機関グループ単位など,日々の検査,診療内容の情報を収集する様々なデータベースがつくられており,そのデータを利用した疫学研究が盛んに行われています.どのような形で疫学研究が行われているのか,実際の論文を例にみてみましょう.
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