49 疫学研究から得られるもの─疫学とリアルワールドデータLEARN MORECHSのデータベースはイスラエルの人口の53%にあたる470万人をカバーしています. この研究は後ろ向きコホート研究という研究デザインで行われています.ワクチン接種群に対し,比較する非ワクチン接種群(コントロール)を選ぶ方法として,両群の交絡をできるだけ小さくする目的で「マッチング」という手法を使用しています.2020年12月20日から2021年2月1日までの期間にワクチン接種を受けた人のなかから1人を選び,ワクチンを接種したことのない人のなかから,その人と年齢,性別,セクター(一般ユダヤ人,アラブ人,超正統派ユダヤ教徒),居住地域,過去5年間のインフルエンザワクチン接種歴,妊娠の有無,および併存疾患の総数,がマッチした人を選びます.こうしてワクチン接種群,非接種群それぞれ1:1となるように選んでいきます.条件にマッチした相手がいなかった場合は解析から除外されます.アウトカムは,PCR法陽性の新型コロナウイルス感染(症候の有無にかかわらず),症候性のCOVID-19,COVID-19に関連した入院・重症化・死亡です.これら5つのアウトカムそれぞれにおいて,ワクチンの有効性をKeier推定を用いて,100%×(1-リスク比)で表しました. マッチングされた人数は,ワクチン接種群,非接種群ともに596,618人 でした.初回接種後14~20日目,および2回目接種後7日以上経過した 時点それぞれにおいて,新型コロナウイルス感染に対する推定有効性は 46%〔95%信頼区間(CI)40~51%〕および92%(95%CI 88~95%),症 候性COVID-19に対する有効性は57%(95%CI 50~63%)および94%(95%CI 87~98%),入院に対しては74%(95%CI 56~86%)および87%(95%CI 55~100%),重症化に対してはそれぞれ62%(95%CI 39~80%)および92%(95%CI 75~100%)でした.COVID-19による死亡予防の推定有効性は,初回投与後14~20日目で72%(95%CI 19~100%)でした.著者らは,この論文により,イスラエルの全国的なBNT162b2 mRNAワクチンの集団接種が,COVID-19関連の幅広い転帰に有効であったと結論づけています.マイヤー・カプランMaplan-
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