2651健康寿命を考えた日常頻用薬の選び方・使い方
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176内分泌代謝疾患/糖尿病  SGLT2阻害薬心・腎・肝保護を目指したSGLT2阻害薬の適切な使用方法は?内分泌代謝疾患/糖尿病  SGLT2阻害薬39Sodium glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬は,腎臓の近位尿細管でのグルコースの再吸収を抑制することで血糖低下作用を示す経口血糖降下薬です.エンパグリフロジンの心血管安全性試験として実施されたEMPA-REG OUTCOMEにおいてエンパグリフロジンは心血管疾患既往のある2型糖尿病患者に対して心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中の複合エンドポイントをプラセボ群と比較して14%減少させ,心血管死を38%,心不全入院を35%減少させました.また,腎保護効果も同時に示されており,腎症の新規発症・増悪を39%,腎複合エンドポイントを46%減少させました1).それ以降もCANVAS,DECLARE-TIMI 58において心血管イベントハイリスク2型糖尿病に対するSGLT2阻害薬の心血管イベント抑制,腎複合アウトカム抑制効果が証明されてきました.心血管保護効果については中でも心不全入院の抑制効果が特に顕著であり(約30%の心不全入院抑SGLT2阻害薬の心・腎・肝保護のエビデンスpointpoint 11●症例患者経過71歳男性 13年前から2型糖尿病と診断され,メトホルミン 1,000 mg/日で治療を継続していた.直近のHbA1cは7.3%であった.腎症は2期(eGFR 55 mL/分/1.73 m2)と進行を認めており,5年前に労作性狭心症に対してPCI(percutaneous coronary intervention;経皮的冠動脈インターベンション)歴がある.最近になり下腿浮腫の増悪あり,BNPを測定したところ,140 pg/mLと高値を認めた.心エコーではEF 52%と保たれていたが,拡張障害を認めた.心・腎保護を期待して,エンパグリフロジンが開始された.6か月後の採血では,BNP 74 pg/mLまで低下を認め,随時尿アルブミン値も減少を認めた.

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