1糖尿病・内分泌コモンディジーズカルシウム・マグネシウム異常検査と結果の解釈について述べる.なお途中,低マグネシウム血症についても触れる.まず病歴を聴取する.Caを上昇させるような薬剤内服や,不動(長期臥床),悪性腫瘍や肉芽腫性疾患の合併などがないかを確認する.血中Ca濃度が異常の場合は,必ず血中リン濃度も同時に確認する.そして,Caの制御ホルモンであるPTH,活性型ビタミンDを測定する.PTHは,腎近位尿細管でのリンの再吸収を抑制する〔Na-P共輸送体(sodium/phosphate cotransporter-2:NaPi-2)のendocytosis促進による細胞膜表面の発現低下〕ため,PTH依存性高カルシウム血症では血中リンは低値となる.PTHが抑制されており,非依存性の場合はPTH関連蛋白(PTH-related peptide:PTHrP)を測定する.PTHrPが高値の場合も同様に血中リン低値となることから,血中リン濃度の上下によってある程度,病態が予測できる.PTH依存性か否かで,大きく鑑別は分かれる(図5). 1 高カルシウム血症 1 高カルシウム血症 1 高カルシウム血症 高カルシウム血症Ca腎排泄の低下図4 低カルシウム血症における徴候(テタニー)12生理食塩液脱水高カルシウム血症による食欲低下,尿の濃縮力障害による多尿で脱水をきたす.脱水になると近位尿細管からのNa再吸収に伴い,受動的にCa再吸収が亢進する.また,脱水に加えてCaが高いと輸入細動脈が収縮し,腎前性の急性腎障害をきたし,尿中へのCa排泄が低下する.Ca再吸収の亢進とCa排泄の低下によって高カルシウム血症が助長される.それがさらに食欲不振に拍車をかけ,腎性尿崩症をきたし,この悪循環によって高カルシウム血症クリーゼとなってしまうこともある.治療としては,脱水の解除,尿へのCa排泄の促進,骨吸収の抑制などである.副甲状腺ホルモン(PTH)依存性高カルシウム血症の場合は,Ca感知受容体作動薬もPTH低下を介して奏効する.Ca再吸収の亢進(近位尿細管)輸入細動脈の収縮図3 高カルシウム血症クリーゼとその治療フロセミド急性腎障害(腎前性)高カルシウム血症食欲不振尿の濃縮力障害(腎性尿崩症)ビスホスホネート製剤PTH依存性の場合はCa感知受容体作動薬(シナカルセト,エボカルセト)195
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