CASE STUDY 2 63歳女性.肋骨,腰椎など複数の骨折歴あり,整形外科にて骨密度低下を指摘された.全身に痛みを生じるようになり,鎮痛薬や抗不安薬の定期内服が必要となった.その後,生化学検査にて著明な低リン血症の存在が判明した.内分泌内科にて精査の結果,腫瘍性骨軟化症と診断された.右大腿骨に発生した線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23:FGF23)産生骨腫瘍の摘出術によって低リン血症は改善され,全身痛も軽快した.疲労感,食欲不振,体重減少などが多い1).本症例のように,筋力低下や筋萎縮が前面に出る症例はまれである.「内分泌検査をしてみよう」という発想がなければ,診断に至ることはできなかった.内分泌代謝疾患は教科書的な典型例ばかりではないことに注意が必要であり,少しでも内分泌代謝疾患が疑われる症例では,ホルモン値を測定してみることが大切である.とりあえずホルモンを測定してみる,異常があれば採血条件を考慮して再検する,など現場では柔軟に対処するべきである.血算や生化学検査の異常を端緒として,内分泌代謝疾患の診断に至ることも少なくない.個々の疾患において,どのような検査異常がみられるのか十分に理解する必要がある.内分泌代謝疾患ではさまざまな検査異常をきたすが,病態と合わせて理解すると頭に入りやすい.実臨床では,検査異常が端緒となって診断に至ることはよくある.内分泌代謝疾患の診断では,症候や検査異常から原因疾患を想起することが重要である.解説腫瘍性骨軟化症は稀少疾患であり,低リン血症を示す骨軟化症の鑑別疾患の1つである2).保険診療でFGF23測定が可能となり,以前と比較して報告例は増加している.本症例は低リン血症がヒントとなり診断に至った症例であり,整形外科で低リン血症を認識されたことが重要なポイントであった.また本症例では,FDG(fluorodeoxyglucose)-PET所見が決め手となり腫瘍局在部位が判明した3).保険適用外のため,患者には自費でFDG-PETを実施してもらったが(COLUMN 03),最終的には,その費用に見合った治療効果が得られたといえる. 2 内分泌代謝疾患の検査異常 2 内分泌代謝疾患の検査異常 2 内分泌代謝疾患の検査異常 内分泌代謝疾患の検査異常28
元のページ ../index.html#5