喉舌ペーストにした薬を塗りつけるスポイトで少量ずつ流し込む上顎頬の内側口腔26てシロップ剤として服用することも,どちらでも可能です.1歳未満,特にまだ離乳食もはじまっていない6か月未満の子どもの場合,本能で口に入ったものは何でも飲み込もうとします.そのため,小さな玩具や部品などを誤飲してしまうリスクも高い時期ではありますが,逆にいえば“薬を口に入れてさえしまえば飲んでくれる”ということでもあります.また,味覚もまだそこまで繊細には発達しきっていないため,よほど強烈な味でもなければ吐き出してしまうこともそれほどありません(誤飲防止のために強烈な苦味をつけた玩具があるのはこのためです).そのため,この時期の子どもは比較的素直に薬を飲んでくれることが多い傾向にあります.ただし,口の中に「粉」をそのまま放り込むとむせてしまうため,粉状の薬であっても水に溶かして服用してもらうほうが安全です.また,水に溶かして服用する際にも,まだ口腔が小さく嚥下能力も弱いため,「スポイト」などを使って少しずつ口の中,できれば舌を避けて頬の内側あたりに流し込んでいくのがよいと考えられます(図1).「スポイト」を使っていても,あわてて多くの液体を口に流し込むと誤嚥してしまったり,びっくりして吐き出してしまったりする可能性があるため,ゆっくりと行うことが大切です.「スポイト」で飲ませる方法が万能かというと,そうでもありません.というのも,前述の「ドライシロップ剤」であれば比較的よく水に溶けるのですが,「細粒剤」や「顆粒剤」などの場合は水にきれいには溶けないため,薬が沈殿してスポイトの中にたくさん残ってしまう,という事態が起こるからです.こういった場合は,薬をごく少量の水で溶いてペースト状にし,指で頬の内側や上顎に塗りつける(図1),という方法が便利です.このとき,水の量が少なすぎると粉がまとまらず,かといって水の量が多すぎると水っぽくなってペーストとしては扱えなくなってしまうため,“適量 用法(工夫)図1 薬を流し込む,塗りつけるのに適した場所1歳未満の子どもでは,“口に入ったもの”は何でも飲み込もうとする習性を利用する少量の水でペースト状にする,という方法もある
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