2679悩める痛みのケーススタディ
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痛みの部位32患者:80歳,女性.主訴:背部の焼けるような痛み.現病歴:季節は2月中旬,雪が積もっている.患者は「この病院を訴えてやる!」と意気込んで外来のドアを開け,突入してきた.詳細な問診では,腰痛精査目的で施行したMRIの2日後に原因不明の背中のヒリヒリ感を主訴に来院.強い灼熱感を伴う知覚過敏がある.認知症はこれまで指摘されたことはなく,不眠もない.しかし昨日は痛みで眠れなかった.ずっとイライラとした気分でいるとのこと.腰痛はもともと慢性的に認められており,腰椎MRIを施行し腰部脊柱管狭窄症の診断を得ている.高次基幹病院の整形外科,神経内科医,皮膚科医を受診して,不安神経症疑いとの判断で総合内科外来へ紹介となった.前医では痛みや灼熱感を器質的に説明できないとの判断であった.痛みは2日前夕方帰宅後より出現.痛みの場所は背中全体で,Numerical Rating Scale(NRS)10点中3~4点程度が特に誘因なく生じていた.痛みの性質は灼熱感やヒリヒリ感であるとのこと.放散痛は全くなく限局している.ずっと持続しており,体動ではあまり変化はない.また,痛みは昨夜に比べてわずかに軽減しているとのこと.既往歴:腰部脊柱管狭窄症.検診受診歴なし.外傷,転倒歴はなし.内服歴:なし.バイタルサイン:体温36.0℃,脈拍81/分・整,血圧 右上肢145/86 mmHg,左上肢260/ 120 mmHg.SpO2 98%室内気,呼吸数18回/分.意識清明.General appearance:痛みからか焦って怒っている. 眼瞼結膜蒼白なし.眼球結膜黄染なし.瞳孔両側4 mm大で対光反射は正常.心音,呼吸音に異常なし.腹部平坦軟で圧痛なし.脳神経所見は特に異常なし.痛みは背中の全域に及ぶが,皮膚所見では特に異常を認めない(図1).皮疹は全身検索を行うもなし.Case 1身体所見整形外科,皮膚科,神経内科の受診後に原因不明の背部痛を訴えて来院した高齢女性見方を変えたら診断できた!Ⅱ 各 論背部の焼けるような痛み時にはシャーロック・ホームズのように… 4Cを使う

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